いつどこで誰が何をした
「片桐」
放課後
みんながノロノロと帰っていく。僕は教卓の前の人物に声をかけた。
「ひかる」
片桐はこの数日で急に痩せ細ってしまった。
我らが学級委員長も流石にこんな状況にぶちこまれるとこうもヒョロくなってしまう。
「大丈夫?」
今日は大本に加え、時川、そして立花の3人が死んだ。
たった一日で。
「時川がいなくなったってのがいまだに…信じられなくて」
「…喋ってしまったのかもしれないね。立花みたいに入力内容を」
「……時川」
片桐は真下を向いて唇を強く噛んでいる。
「片桐、今このクラスに統率の取れる人間は必要だ。辛いことばっかりだけど、どうか負けないでくれ」
この不安定な現段階で片桐までいなくなると真っ直ぐ崩壊に進むだろうからね。
枕崎や片桐、もう亡き時川のような存在は大切なんだろう。知らんけど。
「ああ。大丈夫だ。俺はいつでもこのゲームを早く終わらせるために動くよ」
片桐が僕を見て口だけで笑った。
「…うん」
「片桐くん」
?
「深川?」
僕らの間に入ってきたのは深川亜由。
「あの…優香のことで話したいことがあって」
深川がチラリと僕を見る。
ああはいはい。
「じゃあ僕はこれで。また明日」
「ああ、気をつけて」
「ありがとうひかるくん、ごめんね」
深川のアイコンタクト通り、席を外した。
深川は昨日時川と話したって言ってたもんな。
何か知ってるのかもしれない。
差し支えなければ明日片桐になんだったのか聞いてみよ。
「ひかるくん」
え、今度は何。
さあ帰ろうと下駄箱で上履きを変えていたら名前を呼ばれた。
振り向けばものすごい近い距離に誰かが居て思わず飛び上がる。
「おわっびびった…え、花里?何?」
一軍のキャピキャピ男子くんじゃん。
どうしたんですか。近くね?
「…あの…」
言い淀んで、目線を外す。
そして再び僕を見る。
何その上目遣い、きもいんだけど。
そしてただでさえ近い距離をさらに近づけて僕の服を掴んだ。
なになになに
「な、なに?」
熱っぽい顔を僕に向けてくる。
前からこの人苦手なんだよ。
やけに視線感じるし、いつも何か言いたげなこの目が嫌い。
それを真っ直ぐ向けられて鳥肌が立つ。
「また、明日」
は?
花里がにっこり笑って僕を見た。
ゆっくり手を離して去っていく背中。
……え
「…きも」