いつどこで誰が何をした


「…いや、すまん。俺も冷静じゃなくなってる」
え?
どうやって犯人じゃないことを説明しようか考えていたら柳谷が自分の頭を抱えた。

「早く犯人を見つけて終わらせないとって焦ってさ…頭良さそうな奴とかに片っ端からこんな感じで声かけてたんだ」
あ、そうなの?
「犯人なんて全く見当もついてないよ」
はあと大きなため息をつく。


「自分の命を守るための方法を考えるのもわかるけど、でも何より犯人を見つけることが大事だ。それさえ分かれば…終わらせられる」
終わらせる…
「そうだね」

「すまん、ひかるは俺らのためにいろんな案を出してくれてたのに、こんなこと言って…」
「いやいいよ。柳谷の気持ちもよくわかる」
柳谷が何度目かのため息をついた。


「誰に聞いたの?」
「え?」
「僕の他に、誰にこんな感じで聞いたの?」
柳谷の推理、ちょっと気になる。
「片っ端からだから特に根拠はなくても聞いたりしたけど」
「誰?」

「えっと…枕崎と東坡と横澤」
へぇよしきか。珍しい。
「あと山野と柿田」
女の子もか。
「で、ひかると…あとまだ聞いてないけど小塚にも聞いてみようと思ってた」

本当に片っ端から聞いてたんだ。
柳谷にしては珍しく計画性のないやり方だな。


「…小塚か」
「ん?」
僕の呟いた名前に反応する。
「いや、僕も小塚には聞いたほうがいい気がする」
「…なんで?」
柳谷のワントーン低い声が返ってくる。

「今日、入力内容を話したら死ぬかもってことがわかったよね」
立花の死で。
「ああ」

「思い返してみたら、立花の他に一人だけ入力内容を喋ったことのある人がいたんだ。まあ状況が状況だったから嘘を言っていた可能性は高いけど…」
「それが小塚ってことか?」
うん。


「昨日大本が指名された時、傍迷惑にも近くにいた人間の胸ぐらを掴んで名前を入力したのかって怒鳴り散らかしてたよね」
「…ああ」

その時だよ。
小塚は言ったんだ
『どこでだったから教室って』ってね。

もしかしたら本当に大本の名前を入力してしまっていて、でもそんなことバレたら確実に殺されるからああ言ったのかもしれない。
でも
「聞いてみる価値はありそうだよね」
「…なるほど」



「それからさ…全く情報がないから考えようがないんだけど『8』ってなんだろうね」
メッセージの送信者。
「8…何か意味がある数字なのか、全く関係ないのか」
8…

「出席番号だとしたら久遠愛菜だけど…そんな単純な話じゃないよな」
あー久遠さんか8番。

でも出席番号なんて簡単なものじゃないよね。
まあ考えたところで何もわからないけど。

『8』
この謎が解ける時は、きっと…このゲームの終盤だろう。何人が生き残ってるかな。



「…まるでフィクションだな」
柳谷が消えそうな声で呟いた。

フィクションか。
うん。デスゲームってやつだよね。
まるで漫画みたいだ。

全部夢なんじゃないかって、思うような。


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