いつどこで誰が何をした


ーー

ルール
あなたのクラスに転送します。
21時にメッセージを送信します。
24時までに内容に答えてこのトークルームに返信してください
※無効内容があります。

今回の文:
「いつ・どこで・誰が・何をした」

あなたの内容
「誰が」


ーー



…誰がか。

帰宅して21時になると当然の如くこのメッセージが来る。
今日は一番厄介なやつが来た。
死ぬかもしれない誰かを選ぶ。
僕は指名された時の緊張感を今日よく知った。
当然だけど指名されるのは避けたい。

流石にまだダブったやつはいない。
このゲームは必ずクラス全員が一回ずつ回ってくるわけではない。
回ってこない人もいれば、何度も指名される人もいる。そういうゲームだ。
一度指名されたからと言って安心はできない。


カチカチと点滅するカーソル。
どうしようか。
誰の名前を…

今まで指名された人は
佐滝
野々村
梅原
大本
山野
そして僕

うち、無事にクリアした者は
佐滝、梅原、山野、僕


…犯人は周期的にバランスが良くなるよう調節しているのかもしれない。

ゲームを楽観的に捉えていても生活していれば普通にクリアできる佐滝の内容から始め、
微妙な時間に設定し、見せしめに殺された野々村の内容。
そしてそれを踏まえて実行するであろう、クリアしやすい梅原の内容。
ゲームの醍醐味である有り得ない文になり、難易度を示した大本の内容。
難易度こそは高いがクリアの兆しはあり、なおかつ山野というレベルの高い人間を選択し、クリアさせた昨日の内容。
そして…今日の僕の内容。

おそらく犯人は今日の内容で昨日団結してしまったクラスを崩壊させたかったのだろう。
『さす』なんて言葉をこんな常軌を逸した状態で提示されれば、パニックになって僕が誰かを刺し殺すか、それができず死ぬか、大怪我を負わせ僕が孤立するか。
そのどれかを予想していたんだろう。

山野がクリアしたから今回はさらに難易度を上げてきた。クリアが続かないように難易度を調整していたのに僕がクリアしてしまった。
犯人の想像を上回る方法で(笑)


だからおそらく…

明日は…無事にはすまないかもしれない。
難易度は確実に上がっている。
僕らがゲームに順応し始めたから。

それを踏まえた上で、誰を選ぶか。



『宇佐美翔』


過去に僕が選んだことのある名前。
僕にとってどうでも良い人間。

僕はまだ経験していないけど、大本や野々村を選んだ人はどんな気持ちだったんだろう。
自分が選んだ人が死んだとなれば辛いだろうな。

少し考えて僕は入力した名前を消した。



『小塚満』


新たな名前を書いてじっと見つめる。
僕が今思う、一番怪しい人間。

しかし、青く光る送信ボタンには触れず、再びその名前を消す。



『片桐


…んー。

途中まで打ってやめた。
彼がいなくなるのは非常によろしくない。
それに、この胸騒ぎはきっと一時のものだ。



『成川智』


僕にとってどうでも良い人間その2。
彼のことはよく知らない。控えめだということだけ知っている。

…これで死なれたらちょっと後味悪いか。
それによく知らない人間をこの本性が垣間見える空間で知るのも悪くない。


しかし、そんなことを言っていては決まらない。
どうしようか。

……んー
まあ、いいか。



『新田ひかる』


送信ボタンを押した。

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