いつどこで誰が何をした
10月29日
翌日
僕はため息をつきながら下駄箱で靴を変える。
最近は祐樹も一緒に来たり来なかったりだ。
でも僕らは昨日からお互いにRINEで生存確認をすることにしたから安心だ。
再度ため息をつき、靴を持って振り返った。
ドン
「わっ!」
誰かにぶつかった。
ボトンと靴が落ちる音がする。
「あ、ごめん…ひかるくん」
あ
「こっちこそ、ぼっとしてたわ」
落とした靴を拾って渡してやる。
その持ち主は成川智。
昨日、送信こそしなかったが彼の名前を一度入れたのでちょっと後ろめたい。
成川とはあまり喋ったことがないけどこんなに痩せていただろうか。なんだかひどくやつれている。
「あー成川」
「ん?」
とっとと行こうとしていた背中を呼び止める。
「大丈夫?」
「…え?」
あんまり話したことないクラスメイトからこんなことを言われても混乱するかもしれないけど。
「あーいや大丈夫なわけないか」
こんなことになってるんだしね。
「なんかやつれてるような気がして」
「…まあそりゃ…いつも通りご飯食べたりすることはできなくなったしね…」
まあそうだよな。
「大丈夫だって言うと嘘になるけど…僕は生きてるんだからさ…死んでしまったクラスメイトのことを考えたら、どんなに辛くても…生きなきゃって思うんだ」
…。
珍しく成川の方が話を続けた。
まともに彼の声を聞くのは久しぶりな気がする。
成川は一重で横長の目を少し下げる。
「…立花くん…ってさ」
立花?
一昨日、内容を話して死んでしまった彼の名前を唐突に口にする成川。
目を泳がせながら不定期に僕を見る。そしてゆっくり話し出す。
「見た目はちょっと怖いけど…僕の隣の席でよく喋ってくれてたんだ。僕こんなだし、思ったことも言えないような性格だけど…立花くんは仲良くしてくれて…すごく嬉しくて……。でも…あんなことになっちゃって」
…
「だから…僕、どんなに辛くても絶対学校には行くし、生きてやるって…思うんだ」
辿々しくそう紡いだ。
成川のことはよく知らなかったけど、ただ現実に狼狽えるだけではない強い心を持っているのかもしれない。
「ごめん急にこんな話」
「いや…」
申し訳なさそうに僕を見上げて、無理矢理意味もなく笑う。
「…みんなで頑張ろう」
とりあえずそんな言葉をかける僕に
「うん」
とりあえず返事をする成川。
きっとこのゲームがなければ、僕は永遠に成川のこんな一面は知らなかっただろう。
彼の言葉には、確かに重みがあった。
僕はため息をつきながら下駄箱で靴を変える。
最近は祐樹も一緒に来たり来なかったりだ。
でも僕らは昨日からお互いにRINEで生存確認をすることにしたから安心だ。
再度ため息をつき、靴を持って振り返った。
ドン
「わっ!」
誰かにぶつかった。
ボトンと靴が落ちる音がする。
「あ、ごめん…ひかるくん」
あ
「こっちこそ、ぼっとしてたわ」
落とした靴を拾って渡してやる。
その持ち主は成川智。
昨日、送信こそしなかったが彼の名前を一度入れたのでちょっと後ろめたい。
成川とはあまり喋ったことがないけどこんなに痩せていただろうか。なんだかひどくやつれている。
「あー成川」
「ん?」
とっとと行こうとしていた背中を呼び止める。
「大丈夫?」
「…え?」
あんまり話したことないクラスメイトからこんなことを言われても混乱するかもしれないけど。
「あーいや大丈夫なわけないか」
こんなことになってるんだしね。
「なんかやつれてるような気がして」
「…まあそりゃ…いつも通りご飯食べたりすることはできなくなったしね…」
まあそうだよな。
「大丈夫だって言うと嘘になるけど…僕は生きてるんだからさ…死んでしまったクラスメイトのことを考えたら、どんなに辛くても…生きなきゃって思うんだ」
…。
珍しく成川の方が話を続けた。
まともに彼の声を聞くのは久しぶりな気がする。
成川は一重で横長の目を少し下げる。
「…立花くん…ってさ」
立花?
一昨日、内容を話して死んでしまった彼の名前を唐突に口にする成川。
目を泳がせながら不定期に僕を見る。そしてゆっくり話し出す。
「見た目はちょっと怖いけど…僕の隣の席でよく喋ってくれてたんだ。僕こんなだし、思ったことも言えないような性格だけど…立花くんは仲良くしてくれて…すごく嬉しくて……。でも…あんなことになっちゃって」
…
「だから…僕、どんなに辛くても絶対学校には行くし、生きてやるって…思うんだ」
辿々しくそう紡いだ。
成川のことはよく知らなかったけど、ただ現実に狼狽えるだけではない強い心を持っているのかもしれない。
「ごめん急にこんな話」
「いや…」
申し訳なさそうに僕を見上げて、無理矢理意味もなく笑う。
「…みんなで頑張ろう」
とりあえずそんな言葉をかける僕に
「うん」
とりあえず返事をする成川。
きっとこのゲームがなければ、僕は永遠に成川のこんな一面は知らなかっただろう。
彼の言葉には、確かに重みがあった。