いつどこで誰が何をした
清瀬奈加
このクラスにいるはずだった生徒…
「清瀬さんと僕は同じ中学で今年からこの高校に一緒に入学する予定だった。だけど入学式の前日…彼女は亡くなってしまったんだ」
え?
「そんな…」
「亡くなったって…事故?」
「…うん。事故は事故だけど…少し特殊な事故っていうか…詳しくは知らないんだけどね」
枕崎の後ろに座っていた成川は、ぎゅっと自分のズボンを握った。
俯いたまま、少し間を置いて再び話し出す。
「彼女は解離性障害を持っていて、いわゆる多重人格者だったんだ。でもそう頻繁に発症するわけではなくて、小さい時にはよくあったらしいけど精神的に大人に近づくに連れ、その症状は出づらくなっていた」
解離性障害…
精神的病気の一種。
「発症には精神状態が強く影響する。きっと…これから始まる高校生活にひどく緊張していたんだと思う。解離性障害が発症しないか、受け入れてもらえるか。彼女は人との出会いにすごく臆病だったから…。それできっと極度の緊張とストレスから症状が出てしまったんだと思う。急に暴れ出して家を飛び出したらしい…。
その後のことは詳しく教えてもらえなかったからよくわからないけど…きっと自我を失って別の人格でふらついている時に…なんらかの事故にあったんだと思う」
そんなことが…
しんとする教室。
成川が少し顔を上げる。
その目は僅かに震えていた。
「僕達は少し離れた町の中学から来てるから、僕の他に彼女のことを知ってる人はいない。だから先生もこの事は他の生徒には伝えないことするって…。だけど入学式やら清瀬さんのことやらでバタバタしてて、僕らのクラスの出席番号を直すことを忘れてたんだと思う。席もそのままで…
だから入学当初は清瀬さんの番号が存在してたけど、少しして落ち着いたから無くしたんじゃないかな」
なるほど…。
「だから僕らのクラスは…34人クラスでもあり、33人クラスでもあったんだ」
話し終えた成川がふぅと息を吐いた。
「…そうだったのか」
「だから記憶が曖昧だったんだ。明確な理由も聞かされずに番号だけがズレていたから」
枕崎と柳谷が脳みそをフル回転させている。
「話してくれてありがとう成川」
僕がお礼を言うと成川はふっと笑った。
「いや…何かの役に立つなら僕の知ってることはなんでも話すよ。でもこんな情報が何かに繋がるの?」
「分からない。でも僕達がゲームに巻き込まれた原因は必ず何かあるはずだ。どんな些細なことでもいい。脱出のための糸口を探さなきゃ」
同じように笑い返せば、成川はこくんと頷いた。
「そうだね」