いつどこで誰が何をした
浜崎と越田が手を繋いで校庭へ向かう。
クラスメイトもぞろぞろとついていく。
「ねぇ…美柑は?来てないよね」
廊下を進む中、そんな会話が聞こえた。
柿田と三谷が僕の後ろを歩いている。
「昨日あんなに取り乱したからきっと来れなかったのよ。大丈夫、返信はしてるはずよ。死ぬってわかってて返信しないなんて、そんな馬鹿げたことするはずないじゃない」
柿田の落ち着いた声。
その話の後半、なぜか声が僕の背中にかかっていた気がした。
「そうだよね」
三谷が不安そうに呟いた。
この2人のことはよく知らない。
苦手なタイプだから極力関わらないようにしていた。今後もなるべくそうしたいところだけど…
少しだけ後ろに首を回せば、バチっと柿田と目があった。
「…」
「…」
2秒ほど目線が絡んでいたけど、柿田が先に外したので僕も前を向いた。
「…っ」
…
「…かる?」
…
「ひかる!」
「うお、びっくりした。何?」
「なにって、ずっと話しかけてたよ」
いつのまにか左隣に立っていた祐樹が不審そうに僕を見る。
「うそ、まじ?」
「ぼうっとしすぎ」
え?
「いや別にぼっとしてたわけじゃ…」
「疲れてんのか?ちゃんと寝てる?」
寝てるよ、ちゃんと寝てる。
「もーしっかりしろよな」
…
「祐樹、反対側に立ってくんない?」
「反対?右側ってこと?」
「うん」
「なんで?別にいいけど」
「いや今朝から左側耳鳴りがすごくて」
「なにそれ、やっぱ疲れてんだよ」
そうかな…
「どうした?」
右側に移ってくれた祐樹が僕の顔を覗き込む。
「ううん、なんでもない」
「…きっと大丈夫だよね。浜崎」
心配そうに前の方を歩く浜崎の背中を見る祐樹。
「さあね」
「なんでこのタイミングで身代わり制度なんて始まったんだ…」
「僕らが思いの外ゲームに順応してるからじゃないかな」
「え?」
なんの策略もなしにこの制度を導入するはずがない。
きっと何かある。この制度で何かを変えようとしている。もしくは…誰かを消そうとしているのかもしれない。
隣を歩く祐樹に視線を向けた。
「ん?なんだよ」
……
「…あー祐樹。一番優先すべきは、自分の命だからね?」
「は?何言ってんの?」
いやぁ…
「そんなの皆そうだろ?」
うん。
「そうなんだけど…ね」