いつどこで誰が何をした


「時間はあるから落ち着いてからやろう!」
越田の声。
浜崎がスーッと深呼吸をする。
「うん…大丈夫。やる」
ゆっくり右手をグーにして前に出す。

「よし!いつも通り、楽にやろうね!」
越田も同じように手を出す。

「じゃあ、い、いくよ!」
浜崎の震えた声。
クラスメイトの緊張。


……じゃんけん…
身代わり制度…
じゃんけん…
ゲーム…



「せーの!」
越田の声、そして

「「最初はグー!」」

2人が手を上下に振る。
浜崎のこめかみを汗が伝う。

「「じゃーんけーん…」」

ぎゅっと目を瞑る浜崎。
その手で形を作って前に出す。

「「ポン!」」


……


浜崎はパー。
越田はグー。

…浜崎の勝ち。



しんとするクラスメイト。


「あー!負けた!」
越田が自分の手を見て笑った。
沈黙が解け緊張が和らぐ。
「あ、はは…か、勝った」
浜崎がどっと汗をかいて笑った。

そして無事終えたことに安堵して盛大なため息をつく。
それを見て越田が笑う。
よく見る光景。2人の馴れ合い。


……

「来ないね。通知」
僕の呟きに、枕崎がゆっくりと頷いた。


「ね!大丈夫でしょ葉月!通知きたでしょ?」
越田がグーのまま手を振っている。

浜崎がハッとしてスマホを見る。
そして顔をこわばらせた。
「…き、きてないよ」
「え…?……す、すぐ来るよ!大丈夫だっ…」

励ますためにずっと笑顔だった越田の動きが…
止まった。

< 161 / 334 >

この作品をシェア

pagetop