いつどこで誰が何をした
ピキ
何かが折れた音が聞こえた。
ピキピキ
「い……っっっったい!!痛い痛い痛い!いっ痛いよ!痛い!!」
痛みに叫ぶ声が、ガランとした校庭にこだました。
「…え?」
浜崎がスマホを落とした。
そして目の前を凝視して固まる。
クラスメイトの息を呑む声。
「痛い!いっっ…あああ!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」
そう機械のように叫び続けるのは…
「千夏…?」
越田だ。
頭を押さえて膝をつく越田。
ボロボロと涙を流しながら、頭から何かを取り出そうとしているのか左右の腕で必死に髪の毛を引き抜き続けている。
「痛い!イダイ!イダイイダイイダイイダイイダイイダイイダぃぃぃぃぃぃ!」
…す、げ…なんだこれ
越田の涙が次第に赤黒くなって行く。
鼻血が伝う、頭皮からも血が滲み出してくる。
「ゔあぁぁぁぁ!!いだい!イダイヨ!イダ…な、で…なんでわだじな"の"!!」
うつ伏せに倒れ、なお髪の毛を引き抜き続けながら、這いずって浜崎に近づく越田。
その姿はまるでゾンビ。
次第に髪の毛はひとりでに抜け落ち、赤くなった頭皮が見える。鼻と目から血を垂れ流し続け、ずりずりと浜崎に近づく。
そしてその足首を掴んだ。
「はづぎぃぃぃっっ」
「浜崎!」
唖然とするクラスメイトの中から飛び出した佐滝が正気を失って立ち尽くす浜崎を後ろに引いた。
手が届かなくなり、その場に倒れる越田。
「…ち、なつ…」
「おがじいでじょぉぉ…なんでっなで…わだじなのぉぉ…イダイ…あだじじゃない…アダジじゃないお…はづき…はづきが…じめいざれでるのぉぉお…イダイよぉ…じぬのばアダジじゃない…ばつき…はづきが死ぬばず…なのにぃぃぃあああああぎゃぁぁぁぁぁ!!」
耳をつんざくような高音の悲鳴。
僕の耳鳴りとなんら変わらない耳の痛くなる音。
次第にそれが小さくなっていき、そして…
コテっと、今までのもがきようからは想像もできないほど呆気なく、静かに…
動かなくなった。