いつどこで誰が何をした
それをただ…ただ見ていただけのクラスメイト達は今までのように悲鳴合唱を起こすことなく、呆然と立ち尽くす。
血に染まった校庭の砂と同化するような濁った肌の色に変わり果てた越田。
その目は白目を剥いて浜崎を睨んでいた。
かなり長い間、沈黙が続いた。
誰も何も言えず、動けず、屍のような顔で、やっとのことで立っている。
「…なんで」
絞り出すような乾ききった浜崎の声がその沈黙に響く。
佐滝に引かれていなかったらあの血みどろに巻き込まれてたかもね。
佐滝も浜崎の後ろで白い顔をして越田だったものを凝視している。
あまりにも酷く、気色の悪い死に方だった。
自分じゃなくてよかったと、思ってしまうほどに…
「なんで…千夏が…」
口をぱくぱくさせて固まる浜崎。
「身代わり制度…使ったの?」
低い声で、やっとのことで声を出した片桐。
「…使ってないと思う。変更のメッセージも…来てないし」
枕崎が同じように低い声で答えた。
「…じゃあ…なんで」
…んー
「じゃんけんで負けたからじゃないかな」
僕の言葉にゆっくりとこちらを向く浜崎とクラスメイト。
「…は?」
片桐が目を丸くしている。
隣にいた枕崎も僕を見た。
「じゃんけんには勝ち負けがあるから」
なんとなくそんな気がしたんだ。
ただじゃんけんして、勝った、負けた、はい終わり、とは行かない気がしてた。
そんな嫌な予感は見事的中した。
「そんなこと…書いてなかったじゃない」
柿田が消えそうな声で言う。
「でもそうとしか考えられないよ。忘れたの?このゲームの理不尽さ。
山野の時の『飛び降りる』も、僕の時の『さす』も簡単には終わらなかった。これは『いつどこで誰が何をした』を無理矢理デスゲームにした理不尽なご都合クソゲーだよ」
犯人はなんとしてでも過激にしたいんだろう。
どうしても殺したいんだろう。
みんなが慎重に選んでいる言葉でも、人が死ねるように…。
僕らには足掻きようがない。
結末は必ずバッドエンドだ。