いつどこで誰が何をした


ピロン!


と、窮屈な空気の中に一つの通知音が響いた。
浜崎のだろう。
そっちから聞こえたし。

「…一応…クリアってことにはなるのか…?」
片桐が呟く。
「メッセージを確認しよう」
枕崎が浜崎に言った。
しかし


「………」

浜崎は真っ赤な越田を見て固まっている。
微動もせず、ただ顔面蒼白で固まっている。

「浜崎?」
片桐が少し近づいて浜崎の顔を覗き込もうとした。
その時


「い…いやああああああああ!!」
浜崎が頭を抱えて叫んだ。

まさかまた越田と同じようなことが…と思ったが、
どうやら一歩間違えれば自分も同じ目にあっていたかもしれない越田の惨い死に様を目の当たりにして…

「いやああああああ!いやだぁぁぁ!」

完全に正気を失って壊れたらしい。
タガが外れたか。限界を越えたのだろう。


「いやあああ!助けてぇぇぇ!助けてよおおおお!」
頭を抱えながらボロボロと涙と鼻水と涎とを垂れ流し、意味もなく走り回る。

「浜崎!落ちつけ葉月!大丈夫だから!」
佐滝が必死に止めようとするが浜崎には何も見えていないのか、近づいてくる人間に対して暴れ散らかしている。

「もういやぁぁぁ!嫌だよおおお!!」
そう言って浜崎は恐ろしいものでも取り出すようにポケットからスマホを取って地面に向かって投げつける。

「誰か助けて!!助けてェェェェ!!」
浜崎はぎゃーぎゃー叫びながら僕らのいない方向へ走っていく。
「葉月!」
佐滝が追いかけようとしたが、浜崎は佐滝の胸をかなりの力で押し返した。
「来ないでぇぇ!」
佐滝がふらついて尻餅をつく。

浜崎はそのまま生徒玄関から中に入って行った。
汚い叫び声が遠のく。

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