いつどこで誰が何をした


僕の前に歩み出て来た柿田。
向かい合うように立つ。
そして傍観しているクラスメイトに向けて口を開く。

「ひかるくんを怖いと思ってるのは私達だけじゃないはずよ!よしき」
「おう」
呼ばれたよしきが校庭の砂に足で一本線を描き始める。


「グループで別れましょう。こんな危険な人と一緒にいたらいつ死ぬかわからないわ!
私達のグループで安全に生き残りたい人はこの線より私側に来て。ひかるくんの方でいつ死ぬかわからない恐怖に耐えるって人はこの線よりひかるくん側に行って!さあ選んで!みんな!」


めんどくさいことを始めた。
よしきは僕と柿田の間に線を引いた。
線より校舎側に立っている柿田。
越田の死体側に立っている僕。

新たなリーダーとして立ち上がった柿田のグループ。
それから今までのゲームで指揮をとっていた枕崎や片桐ではなく…何故か僕のグループ。


「個人で動くのは危ないわよ。どちらかには入った方がいいと思うわ。私の方なら変な考えはしないし、みんなが無事に生き残ることを考える。
でも私のチームに入らなかった人までは守ってあげられないわよ」

何が“守ってあげられない”だよ。
今までに柿田は誰を守ったんだよ。
ただ居ただけじゃないか。


顔を見合わせて困っているクラスメイト。
その中で三谷とよしきが真っ先に柿田の方へ行く。
それに続いて牧村も僕を申し訳なさそうに見ながら柿田側へ線を超えた。
さらに杉山と檜山が顔を見合わせておずおずと柿田の方へ行く。
柿田が当然だと言わんばかりに大きく頷く。

少し間を置いて、渡辺が黙って柿田の方へ行く。
「ありがとう渡辺さん。一緒に頑張りましょう」
「…」
柿田の言葉を無視して、渡辺はスマホを見た。


「すまん、ひかる…」
そう呟いたのは佐滝だった。
尻餅をついたまま呆然としていたが、ゆっくり立ち上がり柿田の方へ行った。
「はづきも一緒ね?」
柿田が少しニヤついて言う。
佐滝は静かに頷いた。

それを見ていた小塚が焦ったように小走りで柿田の方へ行く。
その後ろに続くのは宇佐美。
「あら、ありがとう2人とも」
そう言って意味深に僕を見た。

んーなんかよくわからないけど困ったなぁ。
孤立したらまずいんだけどなぁ。


「…あら?いつまでそこにいるの?早く来て」
柿田が誰かを見て言った。
その目が捉えていたのは…
「片桐くん」
片桐だった。
「昨日の夜話し合ったでしょ?あなたも私の味方だって言ったじゃない」
…片桐。
「…ああ。ごめん、ひかる」
片桐は僕を見ずに下を向いたまま言った。
そしてゆっくりと線を超えて柿田の隣に立つ。


おーっと…
あんまりよろしくない状況な気がする。
あれだけの人数がもし、『誰が』に僕を入れれば僕が選ばれる可能性が高くなる。
孤立するのは良くないんだけどなぁ


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