いつどこで誰が何をした

翌日


あー久々に夢を見た。
夢見る時って眠りが浅いっていうよね。
いつもはぐっすりだからなかなか夢見ないんだけど、昨日はさとるさんに会えた興奮で寝付けなかったんだ。

スマホで時間を確認する。
寝癖のついた癖毛をわしゃわしゃしながら重い体を起こした。


家の扉を開けるとざあざあ雨が降っている。
あーだるー
キーーンと耳鳴りがする。
雨の日って耳鳴りしやすいのかな。

今日は帰ってこれるだろうか。
誰も死なずに終われるだろうか。
そんなことを義務感から考えた。



「新田ひかるくんだね」


そんな声をかけられたのは、傘を差して校門を通り過ぎた時だった。
常に立ってるだけのスーツ連中の一人が僕に言ったのだ。

「そうですけど…なんですか」
冷たく返す。
「クラスでグループ分けが行われて片方のグループのリーダーだと聞いた。何か犯人からの接触があったなら教えてほしい」
…。
「教えたら、犯人捕まえてくれるんですか?」
「え?」

いつもそこで突っ立って監視カメラを見てるだけのあんた達が、何か力になってくれるとでも言うんですか?
「もういいですか?失礼します」
冷たく言い、背中を向けた。


「新田くん」
…んだようざいな。
嫌々足を止めて顔だけで振り向くと、さっきの男とは違う人が僕を見ていた。
背が高く、灰色のオールバックの髪。
50代半ばくらいだろうか。

「…なんですか」
「私は警視庁捜査一課の桜木正孝だ」
はぁそうすか。
で?
「‥過去に、君のお父さんの事件に関わっていた」


体ごと後ろを向く。
桜木と名乗った男が僕と一定の距離を保ったまま、静かに口を開く。
「昨日、お父さんに会いに行ったみたいだね。報告があったよ」
…。
「家族に会いに行って何か問題があるんですか」
「いや、何も問題はないよ。ただ、君が彼の息子だということを昨日知ったのでね」
僕もだけど。

「だからなんなんですか?父はこの事件になんの関係もないと思いますけど」
「……父と、呼ぶんだね。彼のことを」
…なにこいつ。
なんか腹立ってきたんだけど。

「あなたに関係ありません」
「…ああそうだね。すまない、少し懐かしくなってしまったんだ。
君に聞きたいことは一つだけだ。何故このゲームの最中に彼に会いに行ったんだい?今まで一度も面会なんて来たことなかったのに、どういう風の吹き回しだったのか。それだけ知りたいんだ」


まあ、命懸けのゲーム中にノコノコ面会に行った僕はかなり変か。
役立たずに疑われるのはストレスになる。
正直に言おう。

「犯人が教えてくれました。僕がさとるさんの息子だということを。だから会いに行きました。犯人が僕にこの情報を渡したのは何故か、それを知るために」
「……犯人から…」
「もういいですか。今日のこともあるので、失礼します」

今度こそ背中を向けてスタコラと去った。

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