いつどこで誰が何をした


僕は少し下がって、離れたところからわざと足音を立てて教室に近づく。
そして今来ましたと言わんばかりの顔で扉を開けた。

「おはよう二人とも。早いね」
あっけらかんと言う。
二人は前後の席に座っていたのか、枕崎は不自然に柳谷の席の前に立っていた。

「おはようひかる」
山野が少し笑っていつも通りに言う。
気づいてないか、よかった。
と思ったが
「おはよ」
枕崎は僕を見て片目を瞑り、軽く手を立ててすまんと口パクで言う。
枕崎は気づいてたか。


「雨強くなってきたね」
山野が窓の外を見て言った。
雨音が大きくなり、ざあざあと叩きつけるように窓を濡らしている。

耳鳴りがする。

「だね」
「…」


今日も、無事に終わるといいけど。


大きくなる雨音と耳鳴り。
分厚い雲を通してぼんやり光る太陽。
うっすらと窓の影を型取り差し込む光が、申し訳程度に僕らの視界を明るくした。


「…なんだか嫌な天気だな」


枕崎の低い声ががらんとした教室に少しだけ響いた。

< 210 / 334 >

この作品をシェア

pagetop