いつどこで誰が何をした
僕は少し下がって、離れたところからわざと足音を立てて教室に近づく。
そして今来ましたと言わんばかりの顔で扉を開けた。
「おはよう二人とも。早いね」
あっけらかんと言う。
二人は前後の席に座っていたのか、枕崎は不自然に柳谷の席の前に立っていた。
「おはようひかる」
山野が少し笑っていつも通りに言う。
気づいてないか、よかった。
と思ったが
「おはよ」
枕崎は僕を見て片目を瞑り、軽く手を立ててすまんと口パクで言う。
枕崎は気づいてたか。
「雨強くなってきたね」
山野が窓の外を見て言った。
雨音が大きくなり、ざあざあと叩きつけるように窓を濡らしている。
耳鳴りがする。
「だね」
「…」
今日も、無事に終わるといいけど。
大きくなる雨音と耳鳴り。
分厚い雲を通してぼんやり光る太陽。
うっすらと窓の影を型取り差し込む光が、申し訳程度に僕らの視界を明るくした。
「…なんだか嫌な天気だな」
枕崎の低い声ががらんとした教室に少しだけ響いた。