いつどこで誰が何をした
「ひかる、昨日どうだったの?」
そわそわしていた柳谷が上擦った声で言った。
その言葉に他のみんなも反応する。
「んーどうだったって言われても…本当に何もなかったよ。ただ父親に会って学校の話とかして…それだけ」
「このゲームについて関係ありそうなことは?」
「何もなかったよ」
僕の言葉に柳谷がうーんと唸る。
「ひかるの父親は無関係?だったらなんで犯人はあんな情報を送ったんだろう」
さあね。
「どんな人だったの?」
成川がおずおずと聞く。
「普通の人だったよ」
「ふつう…」
「僕と似た顔をした、普通の、大人の人」
「そっか」
どんなやばい人かと思ったけど…ちょっと残念に思うくらい、本当に普通の人だった。
紛れもない僕の父親。普通の僕の、普通の父親。
「…このゲームの犯人も、きっと普通の人なんだろうね」
山野が静かに言った。
「…そうだね」
人は、見た目じゃわからない。
むしろ怖い見た目をしている人はそういう鎧をつけているだけで、人間は誰しも『普通』ではない何かを持っている……のかもしれない。
知らんけど。
「そっちはどうだったの?片桐達と話したんでしょ?」
「達っていうか片桐だけ。柿田のグループを探しに視聴覚室に行ったら、ちょうど三谷が死んだことが発覚した瞬間で…お通夜状態だったよ」
…そうか。
杉山がクリアしてメッセージを確認したんだろうな。
「柿田たちは呆然としてたから、俺らに気づいた片桐が細かく説明してくれたよ」
…なるほど。
片桐は敵対したいわけではなさそうだね。
「ひかるが父親に会いに行ったことは伏せといた。面倒なことになるのは避けたかったし」
「ありがとう」
…誰も死なない日がない。
最後に誰も死ななかったのは…
いつだ?
いや、そんな日…あったか?
……ゲームが始まる直前…か。