いつどこで誰が何をした
美術室に入ったのは僕が最後だった。
みんな不安気に美術室を見回している。
「ひかるさん?」
「…ん」
久遠さんが僕の顔を覗き込む。
「大丈夫ですか?顔色が悪いですけど…」
「……大丈夫…。後で話すよ。とりあえず先に成川を」
「…ひかるさん?」
不安そうに辺りを見回す成川に近づく。
「成川、これ」
「それは…」
僕が差し出したのは、ここに来る途中に倉庫から持ってきたスコップ。
「とりあえず使えそうなものを持ってきた。これでそこら中のものをぶっ壊せ」
「…うん。ありがとう」
美術室にはどっかのクラスが作った紙製のランタンや粘土細工、壁には美術部の人たちが書いたであろう絵が飾ってある。
壊せそうなものはあるね。
「多少は心苦しいかもしれないけど、命には変えられない。成川、全部壊すくらいの勢いで行け」
枕崎が成川の背中を叩いた。
僕らは棚の上に飾ってあったものを持ってきて、一気に全部壊せるように並べる。
東坡が成川にイメージトレーニングしている。
壊し慣れてそうだもんなぁ。
そうして準備しているうちに時間が近づいて来る。
「成川、準備は?」
「…いつでも大丈夫」
8時59分
成川はスコップを持ち上げて肩に担ぐ。
「みんな、離れててね」
僕らは教卓側に固まっている。
カチカチと時間を刻む音。
枕崎がスマホと睨めっこしている。
「…僕は…こんなところで死ぬわけにはいかないんだ」
成川が小さな声で言った。
「ひかるくんのグループに入って…少しでもいい、役に立つんだ。もし…このゲームに清瀬さんが関係しているのなら…僕は彼女の友達として…知らなければならない義務がある…」
清瀬奈加
本来このクラスにいたはずの出席番号8番の生徒。
「…僕は生きるぞ、生きてやるぞ」
自分の背中を自分で押すようにそんなことを呟く。
ああ、そうだ成川。
生きろ。お前は生きなきゃダメだ。
思い切り暴れろ。
カチ
9時00分
「成川!時間だ!」
枕崎の声が響いた。