いつどこで誰が何をした
「うわあああああ!」
成川が力強い叫び声をあげ、スコップを振り回す。
ガシャーン
派手な音が鳴り、集めておいた粘土細工や彫刻がバラバラになる。
成川はやたらめったら暴れると思っていたが、確実に狙いを定め、スコップを横向きにして対象を切断するように的確に壊して行く。
美術品は見事にぐちゃぐちゃに破壊された。
息をつく間も無く、成川はスコップで壁に飾られている絵をビリ!と破いた。
スコップを壁に刺し、そのまま下に思い切り引く。
ビリリ!と音を立てて絵が破れていく。
この上ない破壊工作。
ものすごい暴れよう。
まるで…成川自身が壊れたようだ。
これならよっぽど大丈夫だろう。
ピロン!
!
と、僕が預かっていた成川のスマホが通知音を鳴らす。
開くとクリアの文字と縦に並んだ……数字、列…
「成川、もういい通知が来た」
ガシャン!
ビリリ!
聞こえてない…?
成川はぜぇぜぇと汗を流しながら絵を破り続けている。
「もう大丈夫だ!」
「成川!やめろ!」
「落ち着け!聞け成川!」
みんなも口々に止めようとするが、正気を失っているのか、成川は暴れ続けている。
壊れてるね。
「東坡!成川を止めてくれ!」
枕崎が僕の前に屈んでいる東坡の肩を叩く。
「あ?何で俺なんだよ。お前が行きゃあいいだろ」
東坡はだるそうに枕崎を睨む。
そういえばここ仲悪かった。
「うああああ!」
成川は叫び続け、破壊工作を止めない。
このままじゃまずいな。
「東坡、止めてよ!」
今度は花里が叫ぶ。
「だから何で俺なんだよ」
「東坡強いだろ!」
「はあ?テメェが行けよ」
「僕じゃ死んじゃうよ!」
枕崎が助けを求めるように僕を見る。
んー…
「東坡」
今度は僕が名前を呼ぶ。
チラリとこちらを見る東坡。
「なんとかして」
……。
「了解」
お。
東坡はすっと立ち上がり、暴れ散らかす成川に器用に近づいて行く。
スコップをうまく避け、そして…
ドッ
あ…
成川を殴って失神させた。
「…ひかるの言うことは聞くのかよ」
柳谷が小さく呟いた。