いつどこで誰が何をした


「…何を言ってるのか全くわからないな」
片桐が不審そうに首を傾げる。

「そうだろうね。片桐は自分と僕が同じだと言ったし、僕もそう思うよ。でも、僕と片桐には根本的に違うところが一つだけあるんだよ」
「……なんだよ」

「お前の行動の根源になってるのは全て死への恐怖。でも僕は違う」


さらに屋上の端へ向かって歩く。
フェンスのない危険な屋上。
僕はその端の段になってるところに上がった。
バランスを崩せば落ちちゃう。

片桐はわけがわからないと言った顔で僕を凝視している。


「僕は片桐を悪い奴だとは思わないよ。でも僕にとってはお前の存在ってすごく邪魔なんだ。勝手にクラスメイトを殺されると困るんだよ」
「…ひかる?」

「クラスメイトが減れば自分が指名される可能性が高くなる。僕みたいなのは特にね」
「…でもこのゲームを続けていれば必ず人数は減る。誰も死なない日があったか?今までに」
大方お前のせいだけどな。


「人数が減ったらゲームはどうなる?片桐」
「……終わるだろ?」

そうなんだよー。

「だから、困るんだよ」
「っ…ひかる…」

「片桐、お前はこのゲームを終わらせることが目的だろ?でも僕は…」


その時、僕のポケットから着信音が鳴り響いた。
これは…
「おや、電話だぁ」
ナーイスタイミング。

僕はポケットからスマホをつまみ出して掲げる。
「柿田からだ」
「柿田?なんで柿田がひかるに電、話…っ!」

片桐は何かに気づいて自分のポケットを漁り始める。しかしちゃんとスマホはあったようで…それを取り出し、さらに不審そうに僕を見る。

「……なんなんだよ…」
「僕がスマホ奪ったかと思った?片桐と同じように」
「……」
「よかったねぇちゃんとあって」
片桐は僕を睨みつけてスマホに視線を落とす。


しかし…少ししてパッと顔を上げた。
目をまん丸にした阿呆みたいな顔。

「これ……俺のスマホじゃない」

「そうだよ。それは越田のスマホだ」

越田が死んだ時に僕が拾ったスマホ。
ずっと持ってたんだ。だから入れ替えさせてもらった。
屋上の扉を開けていた時にね。


「片桐のはこっち」
僕が親指と人差し指で摘んでいるスマホ。

「……ひかる、何するつもりだ…返せ、返してくれ」
「なんで?僕はお前と同じことをするだけだよ」
「まて…待てっ!ひかるやめろ!!」


パッと手を離した。

屋上の隅にいた僕の手から離れた片桐のスマホは
宙を舞い、そのまま下に消えていった。

着信音が小さくなって…消える。

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