いつどこで誰が何をした
「……」
「……」
片桐が屋上の端に手をついて、落ちていったスマホを唖然と眺めている。
「この高さから落ちたらもう使い物にならないだろうね」
僕は淡々とそう言い、段差から降りてドアの方へ向かう。
「……ひかる」
殺しにかかってくるかもしれないと思い、僕は背を向けるのをやめて片桐を見た。
しかし…
片桐は思ったより落ち着いていた。
取り乱すでもなく、顔面蒼白なだけで自我を失っているようにも見えなかった。
「思ったより冷静だね。もっと怒り狂うかと思ったよ」
「……」
片桐はただ青い顔で下を見ている。
「……だって…もう無理だろ」
片桐が僕を見る。
「あーまあ無理だね。スマホ壊れちゃったし、直したところで『8』からのRINEは来ないだろうし」
「違う…」
?
「お前を敵に回した時点で…生き残れる可能性は限りなくゼロだ…」
……。
「あ、そう。まあなんでもいいけど。僕は片桐と同じことをしただけだからね。恨みたいなら恨めばいいけど、僕は罪悪感で苦しむことはないから」
「……」
完全に気力を失ったようだね。
なんだよ、面白くないな。
もっと暴れるかと思ったのに。
僕は再び背を向けて扉に向かった。
片桐は力が抜けたまま、その場に座り込んだ。
ああ、そうだ。
「片桐、さっきの話だけど。僕とお前の根本的に違うところは一つだけ」
片桐がゆらりと顔を上げる。
「このゲームに対する嫌悪感の違いだよ」
さようなら。我らが学級委員長。
何か言いかけた片桐に背を向け、僕は扉を閉めた。