いつどこで誰が何をした
片桐の魂の抜けたような顔。
結構間抜けだったなぁ。
僕は決してゆるくはない速度で階段を降りた。
「ひかるくん!」
と、降りていく僕と反対側から花里が駆け上がって来た。
はぁはぁと息をしながら僕を見ている。
「花里」
不安そうに眉を顰める。
「片桐は…?」
「上にいるよ」
「……」
「生きてるよ。今は、まだ」
「……そっか」
花里が少し目を伏せる。
「殺してくると思った?」
「……いや?あのひかるくんがそんな勿体無いことするわけないと思った」
花里はにっと口だけで笑う。
かなり無理矢理口角を上げているような顔。
「殺して欲しかった?」
僕がそう問えば、花里は少し目を見開いて再び俯く。
「…ひかるくんがしたいようにしてくれれば、僕らは誰も何も言わないよ」
答えになっていない返答。
「僕は片桐がやったことと同じことをしただけ」
「そっか。さすがひかるくん」
花里は普段あんなにうざいけど、割と空気を読む方だ。
なるべくいつも通りを装い、彼はそう言ったが
確かにこめかみには冷や汗が滲んでいた。
「片桐は自分がしたことは間違ってないって言ってたよ」
「……へぇそう」
「まあどうでもいいけど」
「…うん。もうどうでもいいや」
花里は一瞬鋭い目を僕の奥に向けたが、すぐにいつも通りの笑顔に変わった。
「行こ!ひかるくん!みんな待ってる!」
…はぁ
「手を握るな」
「わーん!ケチー!」