いつどこで誰が何をした


祐樹が帰ってから少しして、僕もやっと下駄箱へ向かった。
いつもよりノロい歩度で校庭を横切る。


と、前を歩く制服の後ろ姿を発見した。

「…小塚?」

そのふくよかな体系はこのクラスに一人しかいない。僕の声にビクッと反応して振り向く。

小塚は僕を見るとものすごい目を泳がせた。
「ひ、ひかるくん…」
「どうしたの?もう解散したの?」
「…いや、えっと……う、うん」
頑なに目を合わせようとしない。

「顔色悪いけど、大丈夫?」
「だっ…大丈夫」
僕が近づこうとすると一歩引いて距離を取る。


……小塚のことはあまりよく知らない。
いつもだんまりとしているし、特定の仲のいい友達もいない。
大本を筆頭に、クラスメイトに揶揄われている様子をたまに見かけた。

このゲームにおいては影が薄いってのは得なことだと思うけど…それは敵はいないけれど味方も少ないということ。

僕としては、彼が一度も指名されずここまで生き残っているのはかなり意外なことだった。


「今日は実行できた?」
そういえばそちらの情報を知らない。
片桐を連れ出した時も勢いだったからよく見てなかったし。

「…あ、い、一応」

「一応?誰も死ななかった?」
「……」

死んだの?
成川がクリアした時点では、梅原以外にばつ印は特に増えてなかったけど…
あの後?


「誰が死んだの?」
「…」
「クラスメイトとしてそれくらいは知っておきたいんだけど」
「……」

喋ろうとしない小塚。
こめかみを汗が伝っている。

「…小塚?」
「…さ、佐滝くんと…浜崎さん…」
え?

「佐滝と浜崎?2人?」
なんで2人?


「…指名が…されてなかったから」

…は?
指名されてない?
どういうことだ。

「内容は…正午…教室で、誰かが、笑った…だった」


誰か…


「名前で指名されてなかった…だから、佐滝くんが先陣切ってやるって言い出したんだけど…失敗した」
失敗…?
「多分…無理やり笑ったから…本当の笑いじゃなかったから…だから…」
なんだそれ…

「それで佐滝くんが死んだのを見て…浜崎さんが泣いて…その瞬間に、浜崎さんも…」
は…
「多分笑えって内容なのに、泣いたからだと思う…」


それは…
「どうやってクリアしたの?」
「……」



「小塚?」

< 232 / 334 >

この作品をシェア

pagetop