いつどこで誰が何をした
枕崎も山野も東坡も、花里も成川も柳谷も。
みんな当然のように着いてきてくれた。
枕崎と柳谷は他の打開策を話し合っている。
僕は祐樹と花里に手を引かれながら、みんなで学校を抜け出して平日の公道を行く。
「この街にある財閥のラボ、オンクセイン第二研究所というところまで行きます。遠くはありません。そこに兄がいます」
「久遠さんのお兄さん…」
「はい。久遠綾人という研究員です。強制思い込みプログラム開発グループの副代表を務めていました」
久遠、綾人…
「思い込みプログラムが盗まれてからも、兄はずっと研究を続けています。もし誰かに悪用された時に対処できるよう、今はプログラムの解除方法を研究しています」
「その解除方法は見つかってないの?」
山野が不安そうに聞く。
「ええ…実物が手元にない状態ではなかなか研究が進まないそうです」
そりゃそうか…
「副代表ってことは代表は別にいるってことだよな」
柳谷が久遠さんのそばに寄る。
「その人は今研究に携わってないの?」
「……」
久遠さんが暗い顔をした。
「久遠さん?」
「…携わってはいません…。グループの代表は、加賀山秀行という人でした」
加賀山…秀行…
ん?
なんかどこかで聞いたことあるような…
「その人ってだいぶ前のニュースでやってた、青地山で殺された人じゃない?」
花里がギョッとして振り向き、何故か僕に言う。
「僕ん家青地山のめっちゃ近くだからそのニュースよく覚えてるよ。怖いねって話してたんだ」
「そういえばこんな小さな街で殺人事件なんてって、ちょっと話題になったよな」
東坡が言った。
「その殺された加賀山秀行が、思い込みプログラム研究グループの代表…」
…そういえば
「久遠さん、思い込みプログラムのことを話してくれた時、行方不明になって遺体で見つかった研究員がいたって言ってたよね」
初めて思い込みプログラムの話を聞いた時にさ。
「もしかして…」
「…はい。その研究員というのが、加賀山秀行です」
「…殺された研究員」
「加賀山秀行を殺したのが…犯人か?」
柳谷が腕組みをする。
「詳しいことは兄から聞いたほうが確実だと思います」
そう言った久遠さんが足を止める。
僕らの前に現れた綺麗な白い建物。
「オンクセイン第二研究所です」