いつどこで誰が何をした
僕らの街の真ん中、申し訳程度に聳え立つ青地山。
なだらかで山と言っても、登るにはちょっとハードな散歩ほどしか体力を使わなくて済む。
しかし登山用の道はあまり整備されていなく、木が多くて人は滅多に寄りつかない。
そんな青地山の麓にあるオンクセイン第二研究所。
ここに久遠財閥のラボがあるなんて知らなかった。
久遠さんに続きゾロゾロと研究所に入る。
独特な匂いが鼻を差す。
コンクリートの床に白い無機質な壁紙。
物は少なく、研究のためだけの施設のようで生活感がまるでない。
入り口には出席ボードのようなものがあり、少人数の名前が書いてある。
どこか不気味で居心地の悪い空気。
思わず小さく身震いをする。
なんだか冷たい空間だ。
だだっ広いコンクリートの空間の向こう側に、分厚い曇りガラスの扉がある。
久遠さんがそこへ近づいていく。
僕の腕を握る祐樹の力が強くなった。
ウィン
と、あたかもな機械音に続き扉が開く。
奥から現れたのは白衣を着た若い男性。
清潔感のあるゆったりした雰囲気の人。
白い肌と茶色い目、ふわふわした髪の毛。
一目でわかる久遠さんの血縁者。
「兄さん」
「愛菜、早かったね」
低く明瞭な柔らかい声。
「みんなを連れてきたの。お願い、プログラムを解除して!ひかるさんを助けて!」
男性が久遠さんから僕らに視線を移す。
「詳しいことは中で話そう。さあみんな入って」
久遠さんのお兄さんが研究所の奥を指差した。