いつどこで誰が何をした


教室に着いても気味悪いくらいしんとしている。
さて、時間がない。

「みんな、よく聞いて。頼みたいことがある」
僕の言葉にゆらりと顔をあげる柳谷と枕崎。

「職員室に行って調べてほしい。あの日、このクラスの中で1人だけ注射を受けなかった人がいる」
「え」
「つまり、Mo153を体内に入れていない人だ。僕の予想だと多分そいつはもう死んでる。その1人がどうやって死んだかを調べて、もし誰かに殺されたようだったら、それが犯人の手がかりになるかもしれない」
口止めされてないし、どうせ僕はこの後死ぬんだからわかっていることは話しておこう。


「そして犯人は、自分の体の中にもMo153を入れているらしい」
「なんでそんなこと知ってるんだよ」
柳谷が低い声で言う。
「まあ色々あってね。とにかく些細なことでもこのゲームに関する事柄は全て洗いざらい調べるんだ。犯人だって人間だ。必ず何か手がかりを落としているはずだ」

ガタッと席を立つ枕崎。
「…わかった。あとは?俺達は何をすれば良い」
……。


「…なんとしてでも生き延びて。どんな選択をしても、何より自分自身が生きることを最優先に考えて」
「……」

「みんなが僕にどんな期待をしていたのかはわからない。ゲームを終わらせられるのは僕だって言ってたけど…僕はみんなと同じ普通の高校生だ。特別な力があるわけじゃない。現に、今日の内容に逆らえず…僕はこの後死ぬ」
「……ひかる…」

「可能なら柿田のグループと協力するんだ。もう一度今生きているメンバーで団結して1年3組に戻り、犯人に抗え」
祐樹は僕を見ず、自分の席で俯いて座っている。

「……色々ありがとう。じゃあ、どうか…頑張って」
僕はそろそろ屋上に行くよ。
自分のスマホだけを持って出口へ向かう。


「ひかるくん!」
花里?
「…僕も行ってもいい?」
……
「いや、ここにいろ」
「……っ…わか、た…」

「ひか…る…さっ」
「久遠さん、着いてきちゃダメだよ。戻って」
ボロボロ涙を流しながら僕の服を掴む久遠さん。
「いやです…いやっ」
「……久遠さん。このゲームをやる上で君は貴重な存在だ。どうかみんなのために必ず生き延びて」
「うぅ…あ、あ…」


久遠さん、柳谷、山野、東坡
枕崎、花里、成川
…そして祐樹

まあ…多分大丈夫でしょ。このメンバーなら。
きっとゴールに辿り着けるよ。


「じゃあね」
教室を出た。

< 256 / 334 >

この作品をシェア

pagetop