いつどこで誰が何をした


教室に着くとやはり僕以外のみんなは揃っていた。
僕を見るとどこかホッとしたように息を吐く久遠さん。
枕崎が小さな声でおはようと言った。

「今日はどうする、ひかる」
柳谷がいつも通り聞く。
「言ってあった通り、注射を受けていないクラスメイトを探す。さっきスーツ連中に担任にコンタクトをとってもらえるよう話して来た」
「…そうか、早いな」
「時間が惜しいからね」


「…ひかるくん」
珍しく会話を割って入って来たのは成川。
どこか不安げに僕を見ている。
「何?」
「…いや、あの…大丈夫?」
「どうして?変に見える?」
「……いや…いつも通り…だったから」

「いつも通りなら大丈夫でしょ」
「……そう、だね」

…空気が悪い。
そりゃそうか。梅原に続いて僕らのチームメイトが死んだんだ。
みんなクラスメイトの死に、慣れているようで慣れていない。


「昨日も言ったけど、いつまでも項垂れていられない。死んだのは祐樹が初めてじゃない。このゲームがどんなものかみんな知ってるはずだ。僕達が今やるべき事はクラスメイトの死を嘆く事じゃない。ゲームに勝つ事だよ」
「……」

だから
「全部終わったら、みんなで思い切り嘆こう」
僕がふっと笑うと、ぐっと唇を結ぶようにして頷くみんな。

「そうだな。全部…終わったら」
枕崎が椅子に力無くもたれかかり、何もない天井を見つめた。
「うん。終わったら目一杯悲しもう」
山野が枕崎の隣の席に移動して切なく笑いかける。
「……」
珍しく山野の方から寄って来たので、枕崎は少し目を丸くしたが同じように笑った。


「……早く犯人を見つけましょう」
久遠さんが珍しく硬い声を出した。
「…早く見つけて終わらせましょう……克馬さんを、ひかるさんの大事な人を奪った犯人を…私は絶対に許さない」
久遠さん、そんな怖い顔できたんだね。

「僕も…。克馬は嫌いだったけど…でもひかるくんの大事な人だ。犯人はひかるくんを泣かせた。ひかるくんを傷つける奴は誰であろうと許さない。必ず犯人を見つけて…ブッ殺してやる」
花里、キャラ変わってるけど大丈夫?

「ひかるくん。僕は克馬の代わりにはなれないけど…でも、ひかるくんの武器になるからね。盾にだってなるからね。僕を利用して。ひかるくんのためなら、この地獄を終わらせるためなら…僕は鉄砲玉にだってなれる」
花里はいつものようなふざけた雰囲気ではなく、心の底からそう思っていることを伝えようと、真っ直ぐ僕の目を見て言った。



……そう。
終わったらね。終わったらそうしよう。
終わったら僕も大人しく嘆くよ。

……そう、終われば…ね。


再び立ち上がろうと、お互いを手を取り合うチームメイトを
冷めた目で見つめた。

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