いつどこで誰が何をした
8時
ーー
〈2グループ〉
本日の内容。
実行してください。
『正午
体育館で
枕崎スイが
勝った』
ーー
……やっぱり。思った通りだ。
そろそろ彼が危ないと思った。
犯人にとっての最大の敵と言っても過言ではない枕崎。おそらく…今までは枕崎の名前を入力する人間がいなかったから指名できなかっただけ。
人数が減るとこういうことが起こるんだ。
ゆっくり枕崎を見る。
彼は無表情でただスマホを眺めている。
「…枕崎」
山野が消えそうな声を出した。
「…勝ったって…また曖昧な指示だね」
枕崎は口だけで笑った。
『勝った』
これは…おそらく浜崎の時のじゃんけんと同じようなことだろう。
「…ひかる…どう思う?」
枕崎が普段通りを装って、でも確かに震える声で言った。
んー…
「勝つためには必ず負ける相手がいる。1人では実行不可能」
今までなら言葉を上手く解釈して回避することも可能だったかもしれない。
だが…ここまできてしまえば、多分もうルールなんてグラグラだろうからね。
犯人は真っ直ぐ枕崎を殺しにきている。
「…1人では実行不可能だとして……もし、誰かが協力してくれたらその人は…」
枕崎がわずかに瞳を揺らして言った。
「うん。枕崎が勝てばその人は死ぬ。その人が勝てば枕崎が死ぬ」
「………」
これは…かなり、キツイ内容だな。
あの枕崎が真剣勝負をして負けることはまずないだろう。
だからこそ、負けたら死ぬとわかっていながら協力を仰ぐなんて…できるはずがない。
どうする、枕崎。
僕はできれば…お前には死んでほしくないよ。
だが、長考には至らなかった。
物語は進む。
「みんな、悪いけど少し枕崎と2人で話してきてもいい?」
と、沈黙の教室で口を開いたのは…
「山野…」
山野が静かに席を立った。
枕崎が眉間に皺を寄せ、ぐっと両目を瞑った。
おそらく…ここで山野に声を上げさせたくなかったのだろう。
山野が声を上げた理由が、枕崎にはわかっているから。彼女が…彼を易々死なせるわけがないという事を、わかっているから…
山野の表情はいつも通りだった。
だが、その目は枕崎よりも力強く光っている。