いつどこで誰が何をした


「それにね成川。いいこと教えてあげるよ」
「……は」
「お前の持ってる起動装置では僕を殺すことはできない。気づいてた?」
「…なんで……」
「あれ、もう忘れたの?自分で決めたルールなのに?」
「…るー…る?」


「身代わり制度を使った時、身代わりになった人間が内容の実行ができなければ…元に指名されていた人間も一緒に死ぬはずだろ?」
「っ!」

「柳谷が身代わり制度を使った時、内容は『泳いだ』だったはずだ。もちろん柳谷は実行できなかった。タイムオーバーで死んだ。でも僕は?あれー?生きてるね」
「……まさか…」


「そう。僕の体内には、もう起動可能なMo153がないからだよ」
「……そんな、こと……」
「僕は自力でMo153を外したんだ。10月29日…成川が失言し、秋沢と辻原が死んだあの日にね」

耳元でバチンと音が鳴った。
あの正体はこれだったんだ。

「どう……やって……」
「Mo153は別名、強制思い込みプログラム。プログラミングされた思考操作の数値を上回る強さで、何かを“思い込む”ことでバグが起きて勝手に作動する。僕はそれをやってしまったみたい」



みんなに僕はおかしいと責められた。間違っていると責められた。
それに対して、僕は『間違っていない』と“思い込んだ”。

成川はみんなの脳に強制的に“死ぬ”と思い込ませて殺してきた。
でもその数値を上回るほど、僕の思い込みは強かったみたいだ。

だから僕はあの日からゲームを離脱していた。


それを確かめたのは昨日。宇佐美を殺す直前だ。
僕は宇佐美に、『誰が』の内容を当てられた時は宇佐美の名前を入れていると言った。
毎回入れていたわけではないが、確かに僕は過去にあいつの名前を入れたことがある。

つまりあの発言は全てが嘘ではない。
入力内容を話したら死ぬという条件が発動しても不自然ではなかった。でも僕は死ななかった。

これが第一段階の確認。


そして昨夜、いつも通り21時に『8』からのメッセージが来た。
僕は……返信していない。
でもどうだ?僕は生きてる。

これが第二段階の確認。



僕は、あの日の時点でゲームを1抜けしていた。
綾人さんの言っていたMo153の発動数がズレていた原因。自力で外した人間。

それがこの僕だったんだ。

綾人さんからMo153が耳の辺りに位置すると聞いてピンと来た。
不自然な耳鳴り、バチンという異常な音。
確かめる価値はあった。

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