いつどこで誰が何をした
一年前。
僕ら家族は交通事故にあった。
トラックの運転手が気絶して僕らの車に突っ込んできた。
運転席にいた父さんは即死…。助手席にいた母さんは右腕を無くした。
後部座席にいた僕は運良く助かったけど、1ヶ月ほど意識が戻らなかった。
そして…意識を取り戻した時、衝撃的な事実を聞いた。
父さんが死んだこと。
そして…
僕のクラスメイト、1年3組のみんなが…僕を除く33人全員が…死んだということ。
訳がわからなかった。
何か事件にでも巻き込まれたのかと思ったけど…
警察の人はよく分からないゲームの話をしだして…僕は当然理解できぬまま、今でも真相を知らない。
刑事さんが僕に夏頃に学校で受けた注射のことを覚えているかと聞いてきた。かなりしつこく。
僕はアレルギーがあるから行きつけの病院でしか注射はしない。そう言ったら何故か青ざめていた。
とにかく…よく分からないけど、あの時のクラスメイトは誰もいないという事実だけ…目を覚ました僕に知らされた。
その事件は世間を騒がせる大ニュースになっていた。
『高校生大量虐殺事件』
オンクセイン第二研究所に勤める、久遠綾人容疑者、清瀬徹容疑者の名前が上がっていた。2人とも既に死亡していたらしく、事件の真相は未だ未解決らしい。
我が子を亡くした親達が警察に押しかけ、大騒動になったというニュースも見かけた。
だが時が経てばそれも歴史に変わる。
一年という短い月日の間に、この事件のことはすっかり過去に変わっていった。
僕はとてもじゃないけど詳しく知ろうとは思えなかった。
みんなが苦しんだ事件。僕には知る義務があるかもしれない…。でも…たまたま免れてしまっただけなんだ。目を逸らすことを、許してほしい。
僕はリハビリと心のケアで、一年近く家庭教師の元で勉強をした。
でも…いつまでもこんなのではいけないと、新たな高校に通うことを決意した。
高校2年生。
僕は普通の高校生。
あの恐ろしい事件の生き残り…とはまたちょっと違うけど…運良く免れた、普通の高校生だ。