いつどこで誰が何をした


「それは俺も思ってたよ」
え?

「枕崎」

僕らの後ろから現れたのは枕崎。
枕崎に声かけられるってちょっと新鮮。
何度か話したことはあるけど、そんなにしっかり関わったことはない。
自ら話に入ってくるなんてかなり珍しい。


「いきなりすまん」
「ううん」
「お前も思ってたって?」
柳谷が興味深そうに聞く。

「あの仕組みは単純じゃない。イタズラなんて軽いものでもない。あそこまでの技術を利用できる身近な人間といったら、久遠財閥の関係者である久遠愛菜だ。
現在、久遠財閥は医療関連以外にもITや小型機械の研究もしている。繋がりは充分にある。
そしてこのRINEが来るようになったのは久遠愛菜がこの学校に転入してきた日から」

それは本人も言ってたな。
「久遠愛菜がこれと無関係とは考え難い」
なるほど。


「まあこれが単なる実験とかだったらいいんだが…もし何か他の目的があるとしたら…少し不安な面はある」
不安?
枕崎が腕を組んだ。

「これだけ厄介なウイルスを操るくらいだ。もっと大掛かりなことをしでかすかもしれない」
柳谷が枕崎の言葉にうーんと唸る。


大掛かりかぁ
んー…


「国家機関を破壊するとか?」
僕の言葉に枕崎はため息をついた。
「飛躍しすぎ」
柳谷もくすりと笑う。

えー無理じゃないと思うけどなー。
一斉に複数の機械に侵入できる上、その痕跡を完全に消す事ができるんでしょ?


「国家軸のデータとかそんなでかいところじゃなくてもっと焦点を狭めて、政治関連の権力保持者個人や国の偉い人個人をそれぞれ追い込む事はできそう。

個人情報や機密データを流出させたり盗んだり出来そうじゃん?
みんな何かしら隠してるからねぇ。スキャンダルだよ、えげつないやつの一つや二つ。
それか機密情報を漏らしまくるとか利用するとか。もう大混乱だね。

あとは放っておけば勝手に世間がけちょんけちょんに叩いてくれる。プライドの高い人であればあるほどきっと心はバキッと行くよー。

正体も証拠も完全に隠せるこの通信技術なら、それ使って国の枢軸となるやつらを個人的な理由で脅すか、支配するか、殺すかである程度操作できそうじゃない?」


話してるうちに色々思いついちゃって早口になってしまった。
…ん?

「…」
「…」
視界の端で二人が固まっているのが見えた。
どうしたんだろ。


「…ひかる…キモい」
え!ひどい!
柳谷がドン引きしてる。
「よくその発想に至るな」
枕崎はもはや感心したように僕を見ている。
「お前普段何食ってんの?」
「…同じ思考になる奴が犯人だったらやばいな」
ええっ
「あくまで最悪の予想だよ!最悪の!言ってみただけだって!」


「おい!枕崎のチーム行くぞ!」

必死に弁解する僕と引いてる2人に体育教師の熱血な声がかけられた。
「「「はーい!」」」


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