いつどこで誰が何をした



みんなは空き教室に集められた。

誰かのすすり泣きが聞こえる。
呆然と椅子に座るもの、口を押さえながらトイレから戻って来るもの。
何人かは泣きながら電話している。


「…ひかる遅かったな、大丈夫か?」
ハンカチで手を拭きながら教室に入れば、祐樹がゆらりと近づいてきて震える声で言った。
「ちょっとトイレで手洗ってた」
「ああ…吐いたのか。無理もないよ…お前一番前だったから…よく見えてた、だろう、し…うっ」
祐樹は吐きそうになったのか口を押さえてえづく。
「大丈夫?」
「う…ん」


「なぁ…」
静かな教室、誰かが重く口を開いた。
「…この事件、あのRINEが関係してると思うんだけど…」

片桐だった。
ただクラスメイトの死に驚愕しているだけではない。ちゃんと冷静に考えられる、我らが学級委員長。
「時間指定は12時…そして野々村指名だった。偶然とは考え難いと…思うんだ」

「…私もそう思う」
静かに同意したのはもう一人の学級委員長、時川優香。
セミロングの黒髪を一つに束ねて、眼鏡をかけた真面目な人。
叫んだ時に頭を抱えたのか、今はいつも綺麗なその髪がボサボサになっていた。
「偶然にしては…出来すぎてるかなって」
何人かが2人の意見に賛同し、ざわつきはじめる。


「おい」
しかしそこに低い声が響いた。
檜山がものすごい形相で片桐達を睨んでいる。
「なんで今そんな考察聞かされなきゃならねぇんだよ。…んなことより…死んだんだぞ…クラスメイトが…野々村が、さっきまで笑ってた野々村が死んじまったんだぞ!」

しんとした。
知ってるよ。みんな見てたんだから。

「なんでそんなすぐに切り替えられんだよ!俺は…俺たち…野々村に…もう会えないんだよ…野々村に…」
ボロボロと涙をこぼしはじめた。

僕らはまだ高校生。
身近な人が死ぬという経験はまだ少ない。
ましてやクラスメイト。ましてや目の前。
あっさり受け止められる事実ではない。

「保健室で…逆立ちとか…そんなふざけたことで野々村が死ぬわけないだろ!?」


< 48 / 334 >

この作品をシェア

pagetop