いつどこで誰が何をした


ルーズリーフを前に長考してみたものの…特に進歩なし。わからないことが多すぎる。
ただ、今僕らが危険な状況にいるということだけは確実だ。

ふと窓を見るととっくに日は落ちていた。
さっさと明日の支度をしよう。


と、その時
21時を知らせる通知音が鳴った。


ピロン!


来た。

スマホに手を伸ばす。
勝手に開かれる白い画面。
僕は返信するより先に、新しいルーズリーフにこのメッセージの文面を書き写した。
そして再び向き直る。



ーー


ルール
あなたのクラスに転送します。
21時にメッセージを送信します。
24時までに内容に答えてこのトークルームに返信してください。
※無効内容があります。

今回の文:
「いつ・どこで・誰が・何をした」

あなたの内容
「誰が」



ーー



誰が…か。


下手すれば死ぬかもしれない誰かを選ぶ。
よりによって今日。
一番当たりたくなかった。

いや…クラスメイトじゃなければいいんじゃないか?
なんて考えてみるけど…


※無効内容があります。


無効…
昨日ダメだった『百年後』
おそらく現実的に実行できるものがいいんだろう。
都合よく作られてる。

実際の『いつどこで誰が何をした』だったら無効なんてことはないけど、このゲームの目的がただ読み上げて笑うことじゃないから…



『リム』

祐樹から教えてもらったなんかのキャラクター。まあもちろん…

「ダメか…」
送信ボタンは現れない。
現実じゃないとダメか。


『棚田正明』

先生には悪いけど試しに担任の名前を入れてみるが
…無理か。

他にも他校や芸能人、他クラス、野々村多田…
試してみたけどやっぱりダメだった。


クラスの人間の名前しか使えない。
それも生きてる人だけ。

どうあがいても選ばされるんだ。



僕は少しの時間悩んで…
ふと、自分の名前を入れてみた。
送信ボタンが出てくる。

いける…

でもなかなか手が進まない…
そりゃそうだ。死にたくはない。

それに危険を犯して自分の名前を入れるやつなんていない。
多くの人が僕の名前を書けば選ばれる可能性が高くなる。

嫌なゲームだな。


ああもう、どうせみんなやらなきゃならないんだ。
悩んで時間オーバーになるくらいなら…

『宇佐美翔』

その名前を確認して、僕は出現した送信ボタンを押した。


野々村とよくつるんでいた宇佐美。
野々村同様女好きとかいう噂をよく聞くが、野々村ほど友好的ではなくつるむ人を選ぶタイプ。

可愛い子やいわゆる一軍とはよく喋っているが、そうでない人にはびっくりするくらい冷たい。
ちょっと嫌な奴。

僕とは普通に話してくれるけど深く関わったことはない。


だからかもしれない。
特に思い入れもない。

もちろん悩みの末絞り出した。
死んで欲しいわけではない。
だけど悪いとも思わない。


だって仕方ないでしょ。
自分の命には変えられない。

それに
きっと誰かも同じことをしているのだから。


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