いつどこで誰が何をした


教室の中はしんとしていた。
何人か来ていて、教室に入った僕らを見て少しホッとしたような顔をする。

死んでるかもしれないからね。
返信せずに、多田みたいに。
瀬尾もそうだったのかな。
彼も返信しなかったのだろうか。


「おはよう久遠さん」
既に席に座っていた彼女に声をかける。
「おはようございます、ひかるさん。ご無事でよかったです」
「君もね」

初めての学校でこんな事件に巻き込まれるなんて、彼女は不運だ。


しばらくして担任が入ってきた。
目元にはクマがあって、昨日よりやつれて老けて見える。
たった1日でこんなにも変わってしまうのか。

半分以上のクラスメイトは揃ったものの、全員ではない。空席がいくつかある。
出席している生徒全員の顔色が悪く、空気がどんよりしている。


教壇に立った先生が教室を見渡す。
「いないのは…」
…みんな大丈夫かな。
「多田と瀬尾と野々村…」
その3人の他にも少し空席がある。

「宇佐美、渡辺、中谷、檜山、辻原か」

5人もいないのか…


「宇佐美と渡辺はご両親から学校へは行かせないという連絡をもらった。まあ…昨日あんなことがあったから仕方ないことだ…」
あ、じゃあ
「2人は生きてるんですか?」
牧原が心配そうに聞いた。
「生きてる?何を言ってる。生きてるに決まってるだろう。変なことを言うな」
よかった。返信はしたんだね。

「咲も生きてる。先生、咲からも今朝連絡もらいました。体調が優れないみたいです」
秋沢が掠れた声で言った。
その言葉に何人かがホッとする。

あとは檜山と中谷か…


「生きてる生きてるってなんなんだ…」
先生は気味悪そうに僕らを見た。

先生からしたら、今いない人たちは昨日の今日で登校できないんだとでも思うだろうが僕たちは違う。
今現在ここにいないことがどれだけ恐ろしいことか…

クラスメイトの顔が青ざめている。
杉山が両手を握って何かを祈るように目を瞑っている。


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