いつどこで誰が何をした
8時になるのを待つ教室はしんとしていた。
通知音よりも先に担任が入ってきた。
「…みんな揃ってるな。来たばっかで申し訳ないが、このクラスはしばらく自宅待機になる。昨夜から行われていた会議で今朝そう決まった。振り回してしまって申し訳ない。
警察からの事情聴取は片桐と時川が代表して残ってくれ。悪いな。
学校からのメールが来るまで各自、自分の家で大人しくしていること。…亡くなった二人のことも追って連絡する。とりあえず今日はすぐに帰宅して…」
「無理です先生」
片桐が先生の言葉を遮った。
「この前も少し話しましたが…僕たちは変なゲームに巻き込まれてるんです。毎日メッセージがくる…とにかく、集まらなきゃいけないんです」
「…何を言ってるんだ」
ま、そりゃそうだよね。
はいわかりましたって言えるようなことじゃないよね。
でもわかってもらわなきゃ困る。
こればっかりは僕らも譲れない。
命がかかってるんだ。
「先生!片桐の言ってることは本当です!」
よしきが席を立った。
「自宅待機にされたら実行できずに死んでしまう人が出るかもしれないんです」
柿田が続ける。
「指定場所は基本的に学校なの!」
「解決策が出るまでみんなで集まって話し合った方がいい」
「自宅待機なんて逆に危ないです!」
柿田に続き、三谷、花里、牧村が強く頷く。
他のクラスメイトも賛同の声を上げる。
「…俺もそう思います。先生」
枕崎が低い声で言い、先生を見つめる。
先生は口を結んで唸っている。
「先生も見てますよね、野々村の最期。今の僕たちは説明がつくような状況下にいるわけではないんです」
僕も枕崎に続き、先生を見つめて言った。
「…ちょっと、待っていてくれ」
先生がおぼつかない足取りで教室を出た。
しんとする教室。
時計を見る。
…もうすぐ来る。
隣の席の片桐もそれがわかったのか時計を見てごくんと唾を飲んだ。
「…来ないで」
後ろの久遠さんがボソリとそんな声を出した。
ピロン!
だか当然そんな願い虚しく、通知音は響く。
誰も開こうとはしなかった。
しかし見ないわけにはいかない。
時間制限があった場合危険だ。
僕はゆっくりと自分のスマホを取り出した。
ーー
本日の内容。
実行してください。
『今夜
校長室で
大本源志が
泳いだ』
ーー
これは…予想していた事態だ。
『いつどこで誰が何をした』
のゲームの醍醐味。
日常ではあり得ない。
そんな奇怪な文章が出来上がること。
それを面白おかしく笑うだけのシンプルなゲーム。
そして僕らを苦しめる
地獄のゲームだ。