いつどこで誰が何をした



「ひかる」
「ん、枕崎?」


昼休み

と言っても午前中は別に授業もなかったので、昨日のようにみんなで解決策を話し合ったが、特に成果は得られなかった。

休み時間になろうが誰も動くものはいなく、ただ死人のように静かに席に座っているだけだった。

すすり泣く声
不安に怯える声
様々な声が薄気味悪くこだまする。


そんな中、はっきりと僕の名前を呼んだのは枕崎だった。
「どう思う?」

枕崎が僕の隣の席の椅子を引いて座った。
片桐の席だが、片桐は時川と一緒に黒板の前で解決策を練りだしている。

「大本のこと?」
「ああ」
チラリと問題の大本の方へ目をやれば
顔面蒼白で人形のように呆然と席に座っていた。


「…クリアできると思うか?」
「さあ…泳ぐっていうのがどういうことを言うのかはっきりわからないからね。きっちりクロールとかで泳がなきゃいけないんだったらかなり難しいね」

「ああ、校長室に人が泳げるほどの水なんて入れられないし、プールを持ち込むこともできない」
「でも先生に許可もらったから校長室は使えるよ。流石に水を入れる許可は出なかったけどね」

「泳ぐのは無理だ…この学校の作りは古い。人が泳げるほどの水を今夜までに入れるなんて物理的に不可能だ。窓やドアの隙間から水が逃げていく。校長室に水道なんてないし、ホースで水を入れるなんて途方もない作業だ」

確かに。2階だし近くにも水道はない。
肝心の大本も何もしていない。本気でなんとかしようとしてるならもう動き出さないと間に合わない。
朝の騒動がなければ協力してくれる人もいただろうが、あんなことがあった後では誰も近づこうとしない。


「じゃあお題の実行は不可能ってこと?」
「…それをどう思うか聞きにきたんだ」
ほー
「何故僕に?さっきの一連の騒ぎがあったから?」
「…いや、なんとなくだ」
へぇ

「…」
「……」
枕崎の人より鋭い目が僕を見る。


「僕は不可能だと思うよ。言葉を言葉のまま捉えるならね」
枕崎と視線をぶつけ、そう呟く。

「…え?」
素っ頓狂な声を出した枕崎を残して、僕は教室を出た。


< 82 / 334 >

この作品をシェア

pagetop