いつどこで誰が何をした



信じられないことに
いや実際こんな窮地に立たされたらこうなるのかもしれないけど…
放課後、今夜死ぬかもしれないという大本に何か声をかける人はいなかった。

みんなが気まずそうにゾロゾロと教室を出ていく。
やっぱり朝の騒動を見ているから声をかけるのが怖かったのだろう。


「新田くん」
え?
「あ、時川」
珍しい人物に声をかけられた。
学級委員の片割れ、時川優香だ。

「どうしたの?」
「帰らないのかなって」
「え、ああ…」
チラリと大本の方を見る。

それを見た時川がはぁと息を吐く。
「今朝あんなことがあったんだし、下手に接触しない方がいいと思うけど」
「…それはそうなんだけど」

でもねぇ…流石に
「怖いは怖いけど…でも多分今一番怖いのは大本だと思うから」
実際僕らもあんな窮地に立たされたらああなるのかもしれない。


「…新田くんって…」

「優しいのね」

「どうだろうね」

「でも自分の身の安全のほうが大事だからね?片桐くんもあなたのことはすごく信用しているの。このゲームを進行する上であなたの存在はきっと大事なものになるわ。だから、その…自分は大事にしてね」
うん…
時川は学級委員に選ばれるだけあって正義感の強い真面目な人だ。頼りになる。


「時川もね」
「ええ、もちろんよ」
「また明日」
「うん、明日」
時川の背中を見送って再び大本に視線を戻した。

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