いつどこで誰が何をした
「大本」
「…」
ああは言われたけど…やっぱりねぇ。
このまま何も言わず去るのはちょっと違う気がするんだ。
大本は元からそんなに人に好かれるタイプでもなかったし、特別な友人も思いつかない。
なんなら嫌っている人の方が多かった。
その結果がここに出ているわけだが、流石に僕は騒動の関係者でもあるし…
ということで声をかけた。
「校長室は貸してくれるって先生も言ってたし、できることはやった方がいいよ」
癇癪を起こされたら面倒なので、ある程度の距離を取ったまま言った。
「……」
僕を見ているようでしっかり目が合わず、
どこかぼんやりとした雰囲気をその似合わないガタイから漂わせている。
諦めたのかな。
個人的には諦めてほしくないけど
生きることを。
生き残って欲しいとは思うけど。
「大本?」
一歩だけ近づいて視線を合わせようと彼の見ているところに立ってみる。
その目がゆっくり僕を捉える。
「…なぁ、ひかる」
イライラしたように貧乏ゆすりを始める膝。
軽く舌打ちして僕を下品に睨みつける。
「このゲームはやらなきゃぜってぇ死ぬのか?」
それ昨日東坡にも同じこと聞かれたけど。
「野々村の死に様を見ての通りだよ」
「でも野々村だけだろ?もしかしたら偶然かもしれねぇ。こんな意味不明なクソゲーなんぞで死ぬわけがねぇんだよ」
…偶然か。
へぇあの死に様を目の前で見ててもそう言うんだ。
中谷と多田のことを聞かされてもそう言えるんだ。
朝あんだけ癇癪起こして荒れ散らかしといて、今更そんなこと言えるんだ。
野々村達の死から何も学ばないんだ。
そんなの彼らの死を無駄にしてるようなものだよね。
ふっと軽く息を吐いて少し顎を上げ、大本を見る。
「…じゃあちょうどいい機会だし、大本が実験台になればいいんじゃない?」
「…は?」
「だって今その実験を行う上での条件が揃ってるのは大本だけでしょ?」
大本の顔が激しく歪んでいく。
「ひかる…お前、俺に人柱になれってのか?」
「別に僕は頼んでないよ。大本が自分で言ったんでしょ?偶然かもって。少なくとも僕はそうは思わない。でも君がそう思うんだったら実験してみればいい」
だってそうだろ。僕は野々村が死んだ日にも忠告してるし、普通のゲームじゃないってあれほど口うるさく言ってる。
それでも偶然だってほざくなら試してみればいい。ただ黙って何もせず、その時間を待てばいいんだよ。
でもそれで死んだからって恨まれるのはごめんだよ。
「悪いけど、僕にできることは何もないよ」
物怖じせず、真っ直ぐに大本を見つめる。
僕の発言は間違っていない。
どうするか決めるのは大本自身だ。