いつどこで誰が何をした


あの後はまっすぐ家に帰った。

不思議と罪悪感はなかった。
イライラのせいだろうか。
朝起きたら罪悪感で死にたくなるのだろうか。
それが人間の『普通』なんだろうか。

でも今の僕らはそれに当てはまらないから…
まあいいか。



21時を待つ。

多分考えたところで解決策なんかわからないから
考えるのはそれが得意な人に任せよう。

僕はそれよりもこのゲームで生き残る方法を考えないといけない。
自分が死んでしまっては意味がない。
僕に主人公補正がついてるなら別だけど、そんな虫のいい話ではない。


いつか僕の名前が上がる時が来るかもしれない。

このゲームを進める上で他人からの評価は大切だ。
今日の大本を見てりゃわかる。
名前を入力するのはクラスメイト。
その数が多ければ指名される可能性が上がるだけ。

慎重に行こう。
気を抜いてはいけない。
命がかかってるんだから。



ピロン!



思わず通知音に体を固くするが、まだ21時ではない。
誰かからのメッセージだろうか。


『梅原』

梅原?
携帯に表示されていた名前は意外な人物だった。
なんだろう。また多田のことだろうか。
開くとまたまた丁寧な長文が書かれていた。


『夜にごめんなさい。
もうわかっていたことではあるけど、今日両親から凛子が亡くなった知らせを正式に聞きました。
心臓発作だったみたい。
彼女は持病も特になかったし、体が弱いわけでもなかったから原因は不明らしいです。
私がわかっていることはこれだけだけど、一応情報共有しておきます。
それから凛子のこと教えてくれてありがとう。
早くこのゲーム終わらせようね。また明日』


心臓発作か。
全員が野々村みたいな吐血で死ぬわけじゃないのか。

やっぱり久遠さんの言ってた機械が関係してるのかな。
毒の類だったら死に方は共通のはず。
でも催眠となれば死に方が異なっていても不思議じゃない。

僕らの力ではその機械をどうにかすることはできないけど、ゲームをやりつつ少しずつ出口へ向かわなければならない。


梅原のトーク画面を見て下唇を噛んだ。
情報が少なすぎる。
何も糸口が見つからない。

今までは何気なく過ぎていた1日も、今となれば綱渡りのようなものだ。



『夜にごめん。多田は心臓発作だったらしい。死に方はワンパターンじゃなさそう。
それから大本は、多分実行不可能だと思う』


高速でフリック入力して送信する。
相手は枕崎。
何故かRINE持ってたから情報を渡しておいた。
しばらくして既読がつく。


『そうか。ワンパターンじゃないとなればやっぱり毒の類ではないか』

僕もそう思う。

『了解。情報提供ありがとう』


それで会話は終わった。

枕崎は大本については触れなかった。
触れられなかったのかもしれない。

それとも現段階で死ぬ可能性の高い人間より、今現在生きている人間がそうならないようにする方が大切だからかもしれない。
枕崎のことだから取捨選択は効率が良さそうだ。

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