いつどこで誰が何をした


「おーい、席につけー」
いつの間にか担任が教壇に立っていた。
裕樹は目を輝かせて席に戻る。
ざわつくクラスメイト、みんなの顔がいつもより生き生きしている。
『転入生』というイベントは僕ら普通の高校生にとって、日常の退屈を紛らわすのに十分なようだ。


「じゃあ昨日も言っておいた通り転校生を紹介する…が!」
ん?
先生が教卓をドンっと叩いた。
しんとする教室。

「転校生がちょっと、変わってるというか」
なに?
「ええー普通の高校から普通に転入してきたわけではないというか…」
普通??
どういうこと?
「その…」


「さっさと言ってくださいよぉせんせぇ」
癖のある口調で聞いたのは、教卓の前に座るツインの髪を緩く巻いた三谷桃。
3分に1回は前髪をいじっているかわい子ぶりっ子で、よく誰かの悪口を言っている姿を見かける。
僕はちょっと苦手〜

柿田玲子が率いる我がクラスの権力保持者グループ『一軍』の一員である。

柿田玲子
廊下側の一番前の席に座る茶髪ロングで、読者モデルの端くれをやっているらしい。見たことないけど。
一軍リーダーなだけあってかなり気が強い。美人なんだけど僕はちょっと苦手〜


ついでに言うと、柿田の隣の席、栗毛色の癖毛と女のような可愛らしい顔立ちが特徴的な、先輩に人気の花里誠
彼も一軍メンバーである。
三谷とはまた違ったタイプの男バージョンぶりっ子で、僕はちょっと苦手〜

それからこのメンバーには似合わないようなちょっとぽっちゃりした体型の牧村椎奈。
一軍メンバーの中では一番話しやすい。誰とでも仲良いし、優しさの権化みたいな人。この人は苦手じゃない。


この時代になると嫌でも軍とやらは形成されてしまうのかね。陽キャラ陰キャラとかいう枠組みが出来始めたのもその傾向の一つだ。知らんけど。

一軍の人間の発言には大体のやつが便乗する。
権力を持つ人間に逆らえないのはどんな小社会でも同じらしい。そういうの嫌だよねー。


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