初めての恋はあなたとしたい
「待たせたか?」
「いや。今来たところ」
「美花ちゃん元気か? 久しぶりだな」
たっくんとは入社式で見かけてから一度も会うことはなかった。同じ会社に入ったものの、本社勤務でない私は全く接点がなかった。唯一、社内報なのでたっくんの仕事ぶりを知ることができるだけ。
「うん。元気」
「そうか。まさか美花ちゃんがうちの会社に就職してくれるなんて思わなかったよ」
たっくんは変わらず優しい笑顔で、つい目が離せなくなる。
「何頼む?」
横からお兄ちゃんが話してかけてきてハッとした。
ドリンクをオーダーし、食事はコースにした。
「それじゃ、美花ちゃん。遅くなったけど就職おめでとう」
ふたりがグラスを上げる。
私も少しグラスを上げると、みんなで揃って口にした。
シャンパンの泡が喉を通り、鼻からフルーティーな香りが抜けていく。
「美味しい」
思わず口にすると、ふたりは笑っていた。
「あの美花がお酒を飲むなんて……」
と大袈裟にお兄ちゃんは言っている。
お兄ちゃんは事あるごとに「美花は可愛くて、美花はお兄ちゃんっていつもついてまわって」と小さな頃のエピソードを何度も言う。またか、とため息が出そうになる。
「そうだよな。こんな小さかった美花ちゃんが働くなんて信じられないよ」
今日はたっくんまで私の小さかった頃の話をする。
確かに私はふたりが学校から帰るのを今か今かと待っていたのを覚えている。公園に行くと言えば付いて行き、家でゲームをすれば隣に座って仲間に入ってるような気持ちになっていた。お兄ちゃんには邪険にされることもあったが、たっくんはいつも私の頭を撫でてくれ、話をよく聞いてくれたのを覚えている。
「もう! ふたりとも私22歳だよ。ううん、誕生日が来たら23歳。いつの話をしてるのよ」
「いつまで経っても美花は小さいままなんだよな」
ふたりはいつまで経っても私を小さな子供のように扱う。それは嬉しくもあり、悲しくもある。いくら私が歳を重ねてもふたりの年齢に追いつくことはない。
「いや。今来たところ」
「美花ちゃん元気か? 久しぶりだな」
たっくんとは入社式で見かけてから一度も会うことはなかった。同じ会社に入ったものの、本社勤務でない私は全く接点がなかった。唯一、社内報なのでたっくんの仕事ぶりを知ることができるだけ。
「うん。元気」
「そうか。まさか美花ちゃんがうちの会社に就職してくれるなんて思わなかったよ」
たっくんは変わらず優しい笑顔で、つい目が離せなくなる。
「何頼む?」
横からお兄ちゃんが話してかけてきてハッとした。
ドリンクをオーダーし、食事はコースにした。
「それじゃ、美花ちゃん。遅くなったけど就職おめでとう」
ふたりがグラスを上げる。
私も少しグラスを上げると、みんなで揃って口にした。
シャンパンの泡が喉を通り、鼻からフルーティーな香りが抜けていく。
「美味しい」
思わず口にすると、ふたりは笑っていた。
「あの美花がお酒を飲むなんて……」
と大袈裟にお兄ちゃんは言っている。
お兄ちゃんは事あるごとに「美花は可愛くて、美花はお兄ちゃんっていつもついてまわって」と小さな頃のエピソードを何度も言う。またか、とため息が出そうになる。
「そうだよな。こんな小さかった美花ちゃんが働くなんて信じられないよ」
今日はたっくんまで私の小さかった頃の話をする。
確かに私はふたりが学校から帰るのを今か今かと待っていたのを覚えている。公園に行くと言えば付いて行き、家でゲームをすれば隣に座って仲間に入ってるような気持ちになっていた。お兄ちゃんには邪険にされることもあったが、たっくんはいつも私の頭を撫でてくれ、話をよく聞いてくれたのを覚えている。
「もう! ふたりとも私22歳だよ。ううん、誕生日が来たら23歳。いつの話をしてるのよ」
「いつまで経っても美花は小さいままなんだよな」
ふたりはいつまで経っても私を小さな子供のように扱う。それは嬉しくもあり、悲しくもある。いくら私が歳を重ねてもふたりの年齢に追いつくことはない。