初めての恋はあなたとしたい
あの日からなかなか予定が合わないが、曽根さんとは他愛のないメッセージのやり取りをするようになった。
恋愛感情なのか? と一度夏木くんに聞かれたが違うと思う。たっくんを思っている気持ちとは違うと言い切れる。曽根さんはいい人だけど、それは友人としてだ。夏木くんと飲みに行くのと変わらない同僚としてのもの。正直なところ、曽根さんを好きになれたら、と思ったこともあった。でもたっくんを思い浮かべると胸の奥が温かくなって、考えるだけで胸がギュッと苦しくなる、そんな気持ちとは違った。
なかなかご飯を食べに行く暇もなくなり、私も年末に向かい仕事が忙しくなってきた。
お兄ちゃんとも顔を合わせなくなり、向こうも忙しそうだ。
そういえばたっくんもこの前シカゴに向かったと望月さんから聞いた。私は見えなかったけど空港で見かけたらしく、とても興奮していた。その後、アメリカの女優さんと肩を並べて楽しげに話しながらプライベートジェットに乗り込む写真がネットに出回っており私は言葉を失った。
たっくんが時折女の人といるのを見なかったわけじゃない。でも今回は違う。お互い思い合うような、寄り添う姿は年月を感じさせるくらいの親密さだった。そして年齢的にも、見た目的にもこれほど釣り合いがとれるのはないだろう。
いつまで経っても忘れられないたっくんへの気持ちに区切りをつけなければならない時期が近づいているのかもしれない。
はぁ……とついため息が漏れてしまう。

「おい、最近ため息ばかりだな」

夏木くんが後ろから肩を叩いてきた。

「うわぁ、びっくりした」

驚いて振り返ると鞄を持った彼が立っていて、ちょうど帰るところらしい。

「あはは……そうかな?」

苦笑いを浮かべる私に頷く彼。

「気がついてるんだろ? 何かあるのか? ま、いいや。ほら、飲みに行くぞ」

なかば強引に彼は私を飲みに誘って来た。私の予定なんて聞かないところが夏木くんらしい。でも本当に私に予定があれば彼は察知してくれ、引いてくれる。よく周りを観察しているのだろう。
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