初めての恋はあなたとしたい

告白

夏木くんに励まされてから、前向きにたっくんへの気持ちを伝えようと考えている。
けれどなかなかタイミングが掴めずにいた。
そうこうしているうちにたっくんが結婚してしまうのでは、と不安が募ってくるが日本にいない限りどうにもならない。
電話やメッセージではなく直接伝えたい。
でも帰国を待っているうちに手遅れになるのが怖い。
意を決して、たっくんへメッセージを送った。

【お疲れ様です。帰国したら少しだけ時間をもらうことはできる? 話したいことがあるの】

何度も文章を考えては消した。
そしてようやくできたものを送信したのだが、私から彼にメッセージを送るのは初めてかもしれない。いつもお兄ちゃんを介していたのを改めて感じた。電話もしたことがなかったのだとハッとした。
たっくんを知っていたつもりでいたけど、大人になってからの彼を何も知らなかったのかもしれないと感じてしまった。
私が知っている彼はもう副社長で、みんなの知っていることと同じくらいにしか知らないのかもしれない。
小さな頃とは違い、身近な存在ではなくなってしまったのではないかと不安がよぎった。
冷静になればなるほどに、友人の妹としての立ち位置でしかなく、そんな妹のような存在から告白されたら困らせるのではないか。今の関係が崩れるのはもちろん、お兄ちゃんとたっくんの関係もどうなってしまうのか。
私は彼と話しにくくなれば仕事も辞めざるを得ないかもしれない。けれどお兄ちゃんまで私のせいで関係が崩れてしまったら……。
考えれば考えるほどネガティブな気持ちが次々と浮かんできてしまう。
そんな思いが頭の中をぐるぐると駆け巡っているとスマホから着信音が聞こえて来て、ビクッとしてしまう。

【元気か? 今アメリカなんだ。この後フランスとベルギーを視察してから帰国だから10日後の予定だけど急ぎかな?】

時差があるはずなのに今さっきメッセージを送ったばかりなのに返信が来てしまった。
どうしよう。
私の「好き」は憧れの延長線上なのかと不安になってきた。
小さな頃から彼しか見えず、仕事を決める時も彼を影からでも支えられるようになりたくて蔵野グループに入った。
でも今の彼の何を知っているのだろう。
焦った私は一度冷静になりたくて、たっくんに慌てて返信をした。

【ごめんなさい。忙しいよね? お兄ちゃんに相談してみることにするね】

お兄ちゃんになんて相談出来るわけない。嘘も方便、と返信をするとまたすぐに返信が来た。

【美花ちゃんからの相談ならいつでも聞くよ。帰国するのを待っててくれないか?】

ドキッとした。
私の相談に乗ってくれようとする誠実な言葉に胸の奥がギュッとする。
何て返信をしたらいいか悩んでいると立て続けにメッセージを受信した。

【12月2日に帰国するからその日の夜にご飯でも食べないか?】

忙しい中、私のことを考えてくれる彼の優しさに胸が高鳴る。
それまでの間に私も自分の気持ちと向き合いたいと思った。

【ありがとうございます。楽しみにしてるね】

それだけようやく返信した。
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