初めての恋はあなたとしたい
あの日から今日までの10日間、私の中はたっくんでいっぱいだった。
今の彼をどれだけ知っているか、と聞かれると多くは知らないのかもしれない。
でも彼の優しさや気遣い、ユーモアのあるところ、心配性なところ、考え始めたらキリがないくらいに湧き上がってくる。
今の彼のことをもっと知りたいと純粋に思った。
けど、彼は私に対してどう思っているのだろう、と反対に考えてみた。
赤ちゃんの頃から知っていて、第二のお兄ちゃんとも言える存在。よくふたりに付いて遊んでいた。勉強だって教えてもらい、何度も一緒にご飯も食べた家族のような存在。
それなのに私から好きと言われたらどう思うのだろう。
妹として見ていたのに、と幻滅されてしまうのかもしれない。距離を置かれたらどうしよう。
彼への気持ちが昂まるのと反比例するように、この気持ちを伝えるべきではないかもしれないと怖くなってしまう。
夏目くんと話した時の勇気はもうかけらもない。
そうこうしているうちに約束の2日になってしまった。
はぁ……とため息が漏れてしまう。

「どうした?」

食堂でうどんを眺めながらため息をついていると後ろから声がかかった。

「あれ? 牧野さん。久しぶりですね」

「ああ。今さっき帰ってきたんだけど、曽根さんとご飯食べてから帰ろうってなってさ」

私の右隣に座りながらそんな話をしていると、定食を持った曽根さんがやって来て向かいに座る。

「お疲れ様です」
 
「美花ちゃん、久しぶり。元気だった?」

長時間フライトして来たとは思えないくらいふたりはピシッとしていて、私の方が疲れている様に見える。

「元気ですけど……」

「なんだ、なんだ。さっきもため息ついてたんですよ」

牧野さんが曽根さんに話してしまう。

「私だって悩むことがあるです!」

「いつも元気な美花ちゃんが珍しいな。どうしたんだ?」  

「色々あるんですよ。私にも悩むことが」

すると曽根さんは、励ますように頭にポンポンと手を乗せてきた。

「そうか。相談に乗れるかわからないけど、聞いてあげるくらいはしてあげられるよ。誰かに話せば気が楽になるんじゃないか?」

もちろん相談出来る内容ではないが、その優しい口調にホッとする。
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