初めての恋はあなたとしたい
私たちのやり取りを聞いて、遠巻きに見ていた人たちは私の口から兄の友人だと聞いたからかコソコソと話す声はやんだ。
たっくんの副社長としての人気の凄さを改めて実感した。
就業時間は終わり、私は早々と職場を後にした。今日は土曜日。航空業界に土日はなく、広報の私たちもイベントなどがあるので土日休みとはならず週休2日として働いている。
従業員の出入り口を出ると、すぐにスマホを手にした。
たっくんからのメッセージが入っており、空港のカフェで待っていてくれているようだ。
私は空港内へ向かうが、向こうから私に近づいてくる人影が見えて来た。
あ、と思わず手を振りそうになるが、昼間のこともある。私はなるべく目立たずに空港を後にしたい。
「お疲れ様」
「遅くなってごめん。待たせちゃったね。もー、昼間はビックリしたよ」
緊張を隠すようにいつもと同じ口調を心がけるが、早口になってしまう。
顔がほてってくるのを感じる。
さっきはスーツだったのに今は着替えたのかカジュアルダウンしていた。
「あぁ。約束していなかったし、帰国して空港にいたからついでに声をかけようと思ってさ」
「そっか……でもあのあと大変だったよ。副社長が食堂に来たって大騒ぎ。おかげで私は白い目で見られました」
不貞腐れたような言い方で話すと、彼は「ごめん、ごめん」といつものように笑っていた。さっきの高圧的な態度とは大違いだったが、あれは仕事の顔だったのかと納得した。
「美花ちゃんは何を食べたい?」
「たっくんは久しぶりの日本だから日本食がいいでしょ?」
いつも私を優先してくれるが、出張から帰って来たばかりと知っているので彼の食べたいものを食べてほしいと思い質問を返した。
「美花ちゃんの食べたいものでいいよ」
「ううん。今日はたっくんの食べたいものにしようよ」
すると頭にポンと手がのる。
「優しいんだな。なんだか大人になったんだと改めて実感させられるよ」
「そうだよ。もう小学生じゃないんだから」
苦笑いを浮かべる。
彼の中でやはり私はいつまで経っても子供のまま。いくら私が歳を重ねても、その分たっくんも歳を重ねている。私たちの差は縮まることはない。どうにもならないことはあるって分かってはいるけれど、やはり歳の差を感じずにはいられない。
さっきは『美花』と呼び捨てにしてくれていたのに元に戻っちゃった……。
特別になれたような気がして胸の奥が熱くなり、何も手につかなかったのに元に戻ってしまったことに気落ちしてしまった。
やっぱり妹扱いなのか。
たっくんの副社長としての人気の凄さを改めて実感した。
就業時間は終わり、私は早々と職場を後にした。今日は土曜日。航空業界に土日はなく、広報の私たちもイベントなどがあるので土日休みとはならず週休2日として働いている。
従業員の出入り口を出ると、すぐにスマホを手にした。
たっくんからのメッセージが入っており、空港のカフェで待っていてくれているようだ。
私は空港内へ向かうが、向こうから私に近づいてくる人影が見えて来た。
あ、と思わず手を振りそうになるが、昼間のこともある。私はなるべく目立たずに空港を後にしたい。
「お疲れ様」
「遅くなってごめん。待たせちゃったね。もー、昼間はビックリしたよ」
緊張を隠すようにいつもと同じ口調を心がけるが、早口になってしまう。
顔がほてってくるのを感じる。
さっきはスーツだったのに今は着替えたのかカジュアルダウンしていた。
「あぁ。約束していなかったし、帰国して空港にいたからついでに声をかけようと思ってさ」
「そっか……でもあのあと大変だったよ。副社長が食堂に来たって大騒ぎ。おかげで私は白い目で見られました」
不貞腐れたような言い方で話すと、彼は「ごめん、ごめん」といつものように笑っていた。さっきの高圧的な態度とは大違いだったが、あれは仕事の顔だったのかと納得した。
「美花ちゃんは何を食べたい?」
「たっくんは久しぶりの日本だから日本食がいいでしょ?」
いつも私を優先してくれるが、出張から帰って来たばかりと知っているので彼の食べたいものを食べてほしいと思い質問を返した。
「美花ちゃんの食べたいものでいいよ」
「ううん。今日はたっくんの食べたいものにしようよ」
すると頭にポンと手がのる。
「優しいんだな。なんだか大人になったんだと改めて実感させられるよ」
「そうだよ。もう小学生じゃないんだから」
苦笑いを浮かべる。
彼の中でやはり私はいつまで経っても子供のまま。いくら私が歳を重ねても、その分たっくんも歳を重ねている。私たちの差は縮まることはない。どうにもならないことはあるって分かってはいるけれど、やはり歳の差を感じずにはいられない。
さっきは『美花』と呼び捨てにしてくれていたのに元に戻っちゃった……。
特別になれたような気がして胸の奥が熱くなり、何も手につかなかったのに元に戻ってしまったことに気落ちしてしまった。
やっぱり妹扱いなのか。