初めての恋はあなたとしたい
「そう言えば相談って何? 何かあった?」

ブフッ
たった今、自分の中で失恋をしたばかりだったのに何故今のタイミングでこの話が……と吹き出してしまう。

「ご、ごめん」

おしぼりを口にあて、息を整える。
仕事で忙しいたっくんの時間をもらってしまったんだ、何か相談しなければと思うが思いつかない。

「あ、うん。もう大丈夫」

「え? もしかして今日話してた曽根くんに相談した?」

眉間に皺を寄せ、顔をしかめている。

「してないよ」

慌ててそう言うと、たっくんはさらに突っ込んできた。

「じゃあ、牧野くん? 夏木くん? あとは松本くんだっけ?」

ポロポロと私の知り合いの名前が出てきて驚いた。

「何で知ってるの?」

「この前仲がいいって話していただろう?」

確かに知り合いの名前を挙げたかもしれない。でも少し話しただけなのに名前を覚えられていたことに驚いてしまう。

「みんな、良くしてくれるけど相談はしてないよ。なんて言うか……そう、自分で解決できたの!」

私の言葉を信じていない様な、疑う様な目で見てくる。いつもなら「そうなの?」で終わるはずなのに何故か突っ込んでくる。
私は会話を変える様に、この前プレゼントしてくれたバックの話をした。

「そう言えばこのバッグね、たくさん入るのに軽いの。しかも色が主張してなくて色々な服に合わせられるから毎日使わせてもらってるの」

「そうか。美花ちゃんが喜んでくれるのならプレゼントした甲斐があったよ」

ふわっと微笑んでくれる彼の顔に私の胸はズキュンと打たれた様な衝撃があった。昔と変わらない笑顔だけど、大人の色気まで醸し出していて、この表情をみて狼狽えない人はいるのかとまた彼の顔を見つめてしまう。すると何故か彼も視線を逸らすことなく私の目を見つめてきた。
絡み合う視線に目が離せない。
お互い何も言葉を発せずに見つめ合ってしまっていたら、目の前のお皿に揚げたてのエビが置かれ、ハッとした。
視線を外すとその気まずさからお互いエビを口にした。
そしてお互い同時に「あつっ」と声を上げた。
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