初めての恋はあなたとしたい
「こっち!」

スペインチームのユニフォームをきた彼は駅の改札を出たところで手を振り、合図してくれた。
私も軽く手を上げ、夏木くんの元へ駆け寄った。

「ごめん、お待たせ」

「いや、待ってない。突然誘って悪かったな」

頭をかきながら話す彼はさして悪いとは思っていなさそう。なんだかいつもよりテンションが高く、楽しみなのがよくわかる。
人混みに流されるようにふたり並んでスタジアムへと歩き始めた。

「ユニフォーム持ってたの?」」

「今日、ここに来る前に買った。この雰囲気も楽しみたいし。これは前田の分」

スポーツショップの袋をポイっと手渡された。思わず受け取り、中を覗くとユニフォームが入っていた。

「せっかくだし、一緒に着て応援しようぜ」

夏木くんは私の分まで買ってきてくれたようだ。

「いくら?」

「いらない。俺が勝手に買っただけだし」

「でも……ユニフォームって高いよ」

1万は絶対にするはず。こんな高いものを同期からもらうわけにはいかないと引き下がらない私に、「それなら後で何か食べるものを奢って」と言われてしまった。

席に着くと私はジャケットの上からユニフォームを着た。周りも寒いからか、上からオーバーサイズのユニフォームを着ている人が多くいた。
夏木くんはリュックからモコモコした膝掛けを取り出してくると私と一緒に膝にかけた。

「ごめん、小さいサイズがなくて。一緒にかけていい?」

あまりスポーツ観戦に行かない私は膝掛けを持って行こうなんて考えてもいなかった。彼の荷物はやけに荷物が大きいなと思ったくらいで私自身は何も持ってこなかった。

「なんか夏木くんって気がまわってすごいね」

「そうか?」

そう言うと私の方に多く膝掛けをかけてくれた。ピッタリと隣に座る彼の体温が伝わって来て温かかった。
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