初めての恋はあなたとしたい
「最高だったなー」

試合が終わると私も夏木くんも興奮気味だった。
接戦で最後PKになり、スペインが勝利した。
大歓声でかなり盛り上がり、私もひとときだったがたっくんの事を忘れられた。
帰りに居酒屋に誘われ、ビールで乾杯をした。
昨日から今朝まで泣いて過ごしていて、週末こんな楽しい気持ちで過ごせると思ってもいなかった。
やっぱり私には素敵なバーやカウンターで食べる天ぷら屋さんは敷居が高かった。
気がつかないふりをしていたのかもしれないが、自分と彼の間には越えられないくらい高い違いがあったのだと思った。

「居酒屋は落ち着くね。ビールも美味しい」

「あぁ。そうだな。勝利のうまいビールは最高だよ」

プハッと勢いよく飲む夏木くんはいつもと同じ屈託のない笑顔を浮かべる。
夏木くんとなら背伸びせず等身大の私でいられるんだなとふと感じた。

少し気が紛れたと思っていたが、帰宅してからはまた思い出してしまい、日曜は何もせずにぼうっと過ごした。
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