初めての恋はあなたとしたい
「少し歩かない?」

私は頷くとシートベルトを外し、車から出た。
日も暮れ、コートを羽織っていても肌寒く感じる。
人気もなく昼間の賑やかな雰囲気とは違いどこかもの寂しい。
駐車場から5分くらい歩くだけで展望台に着くが、眼下に広がる自分の街の灯りがこんなに綺麗だなんて知らなかった。

「今日はすまなかった」

ハッと隣を振り向くと頭を下げているたっくんに驚いた。

「ついイライラして当たってしまった。ごめん」

起伏の激しくない彼がイライラしたなんて珍しい。

「何かあったの?」

「あぁ、その……」

言い淀む姿に、私は聞いてはいけないのだと思い慌てて手を振る。

「いいの、いいの。無理に聞かないから。ごめん」

そう言うと、彼は私の手を捕まえてきた。

「俺が格好悪いところを美花ちゃんに見せたくなかっただけだから……」

「たっくんはいつでも格好いいよ」

ぎゅっと両手で握りしめられたままの手が熱い。

「土曜日にテレビを見た。何気なく見ていたら美花ちゃんが夏木くんと仲良く膝掛けをかけている姿が映ってた」

「あ……」

たっくんも見たんだ。

「それで……彼とはただの同僚だって聞いてたのに、とイライラして」

「本当に同僚だよ。見に行けなくなった同期からチケットをもらったので急遽見に行ったの。スポーツ観戦なんてしたことなかったから夏目くんが膝掛けとか準備してきてくれただけだよ。みんなにも今日聞かれたけど何にもないの」

「でもあんな姿を見たら冷静でいられない」

彼の言葉にドキッとしてしまう。なんでこんなこと言うの?
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