初めての恋はあなたとしたい

「新入社員の皆さん。今日から一緒に働くことができることを嬉しく思います。ただ、ここは会社です。もちろんコミュニケーションは大切ですが学生の頃と違い、実績が求められます。就職が決まって終わりではなく、今日がスタートです。切磋琢磨し、グループを盛り上げて行きましょう。分からないことはそのままにせず、アドバイスを求めましょう。良き先輩がたくさんいます。そして皆さんも後輩に良き先輩と言われるように努力を惜しまない人間になってくれることを望みます」

さっきまでたっくんの顔を見てザワザワしていた新入社員たちは静まり返り、身を澄まされる思いがした。
私もやっと入れた、と思っていたがそこが終わりではないのだと改めて身が引き締まる思いだった。
その後たっくんのお父さんである社長の挨拶が続き、役員紹介などが終わると配属の発表となった。
もちろんたくさんの人数をひとりずつするわけではない。
今日出社した時にもらったA4の封筒の中にはさらに封書があり糊付けされていた。
それを開封するように言われ、社員証と共に配属先が書かれていた。
私はドキドキしながら封筒を開けると、そこには東京にある子会社で空港の広報に配属だった。東京でよかった、と思う反面、本社じゃなかった、と落胆してしまった。

それぞれ配属先の上司がきており、指示のもとそれぞれの上司に連れられ明日からの説明を受けた。明日からは本社ではなく、それぞれの配属先へと向かうことになる。
実は地方勤務の人はすでに知らせが来ていたようで、転居を済ませていたのだと後から聞いた。知っていればヒヤヒヤしながら辞令を待たずとも、都内勤務だと安心していられたのに。お兄ちゃんにそのくらい教えてくれたって良かったじゃない、と後から愚痴ったら、そんなの知らんとバッサリ。
お兄ちゃんってこういうとこあるよね、とため息が出る。