初めての恋はあなたとしたい
フロアへ戻ると渡辺さんが挨拶に来てくれ、そのまま夏木くんとデスクへ向かった。
私も望月さんの隣のデスクへ案内され、ようやく仕事の説明から始まった。
ひとつずつ望月から手取り足取り教わり、私は食らいついていった。
こうしてようやく3ヶ月が過ぎた頃、日々の流れはわかってきて、周りのスタッフとのコミュニケーションがとれるようになった。

「前田、飯でも行かない?」

久しぶりに帰りに会った夏木くんに誘われた。

「3カ月頑張った、お疲れさんの会やろーぜ」

「いいね」

明日はちょうど休みだし、私たちは一緒に電車に乗ると3駅先の少しだけ栄えている駅で降りた。

「「乾杯」」

ビールグラスを重ねたあと、グッと喉へ流し込む。

「はぁ、美味いな」

「うん」

お互いにこの3カ月の間にあった失敗談や先輩たちからの情報を共有しながら楽しい時間を過ごした。
初めて彼と飲んだが、ものすごく話題が豊富で、私はずっと笑ってばかり。気を使うこともなく、本当に彼と同期で良かったと安心した。またこうして飲みに行こうと約束し、この日から定期的に私たちの報告会兼グチリは開催されることになった。
ある時は大きなミスをしてメソメソ泣いているのを慰められたり、困っていることを共有し、お互いどうしたらいいのか相談したり、本当にいい同期だと思う。だから夜電話をしたりしているのをお兄ちゃんに聞かれた時も素直に「すごく仲のいい同期」だと話した。
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