君がくれた無垢な愛を僕は今日も抱きしめる
3.優しい向日葵
温室には熱帯地方の花や植物がふんだんに咲き誇っていた。カラフルで様々な花が人工池に浮かんでいる。小さな噴水もあり、目にも鮮やかだ。

「亮平さん、亮平さん、写真撮りましょう」

「撮ってあげるよ」

スマホを貸してと手のひらを差し出すも、陽茉莉はぷうっとむくれる。

「違います。一緒に撮りたいんですー」

陽茉莉は亮平の横で少しかがむ。
スマホを内側カメラに切り替えてぐっと腕を伸ばしピッタリと寄り添う。背景にはカラフルな花たちが写るように調整して――。

腕がプルプルしているのを発見して亮平はくすりと笑う。そういえばペットボトルのキャップを開けられないくらいだから、陽茉莉の握力は弱いのかもしれない。

「こうでいい?」

反対側から腕を伸ばしてスマホを固定する。
カシャッと小気味よい音が耳に届いた。
陽茉莉は撮れた写真を確認すると、アームサポートに寄りかかりながらふふふと笑い出す。

「上手く撮れてた?」

「とっても。亮平さんと写真、嬉しい。ふふふ」

「どれ? 俺にも見せてよ」

「もちろんです」

二人は一緒にスマホを覗き込む。
ニッコリ笑う陽茉莉の横で穏やかに笑う亮平の姿。

(俺、陽茉莉といるとこんな風に笑って――)

「亮平さんって本当かっこいい」

ニコニコする陽茉莉の頭を思わず撫でる。
レトワールで働くときは編み込んでいる髪の毛が、今日はストレートにおろしている。
柔らかく艶々とした感触は亮平の心を揺さぶる。

わき上がる愛しい気持ち。
手に入れたいと思う独占欲。

それなのに、控えめに陽茉莉の頭を撫でることしかできない臆病な自分に嫌気がさす。

陽茉莉はうっとりと亮平に身を寄せた。
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