君がくれた無垢な愛を僕は今日も抱きしめる
両親が亮平に対して良いイメージを持たなかったこと、とりわけ母が辛辣な言葉を発したことについて、陽茉莉は亮平に謝り倒した。けれど亮平は大丈夫だよと微笑むばかりで逆に胸が苦しくなる。

「亮平さんは嫌じゃなかった? あんなこと言われて」

「嫌かと言われればそりゃ嫌だけど、仕方がないんだよ。皆が皆、陽茉莉みたいに考えてくれるわけじゃないんだ」

「でも……だって……」

泣きそうな顔をする陽茉莉の手を取る。
陽茉莉は優しいから、そうやって考えてくれるのだろう。その気持ちだけで心があたたかくなるようだ。

「うちの両親もね、俺が車椅子になったときは酷い荒れようだったよ」

「亮平さんのためにお家も建ててくれたのに?」

「それとこれは別なのかもね。頭ではわかっているけど心がそれを認めない、みたいな。まあ、今だからわかることなんだけどさ。だから時間をかけてわかってもらうしかないかな」

亮平がそんな風に考えられるのも全部陽茉莉のおかげだ。陽茉莉がいろいろな事に気づかせてくれた。だからこれまで以上に陽茉莉のことを大切にしたいと心から思う。

「おいで、陽茉莉」

握っていた手をぐいっと引き寄せる。

亮平の膝にちょこんと座るのはいつものこと。ぴったりとくっつくとお互いにぎゅうっと抱きしめる。
陽茉莉のあたたかさ、亮平のあたたかさが、荒れていた心をすうっと落ち着かせていく。

そうすると頭も冷えて、少し冷静に物事を見つめられる気がした。

「お母さんも亮平さんのことを嫌っているわけじゃないと思うの。だから、認めてもらえるようにちゃんと話し合うね」

「ありがとう。俺も、陽茉莉のご両親に認められるように頑張るよ」

親の気持ちはわからない。親だって子どもの気持ちをわからない。お互い別の人間なのだ。だけど家族だからこそ、わかり合いたいとも思う。

二人の気持ちが通じ合っているだけでも構わないとも思うけれど、できることならやはり家族にも認めてもらいたい。

陽茉莉も亮平も、お互いに自分の家族に思いを馳せた。
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